「仕事は増えても人は増えない」
もはや羨望の対象ではない公務員

 生活保護行政の変化をもたらしている背景の一つは、1995年以後の生活保護世帯数の増加と、行政改革による公務員定数の抑制が、同時並行していることだ。

 1995年以後、おおむね25年にわたって生活保護世帯が増加を続けている原因のうち最大のものは、社会の高齢化だ。現役時代に恵まれた雇用状況にあった人は、老後は厚生年金との「2階建て」「3階建て」の年金を受け取ることができる。しかし、国民年金のみの場合、それだけで老後の生活を支えられるわけではない。

 持ち家があれば、国民老齢年金だけで生活を賄うことが可能かもしれない。しかし健康を害すると、生活保護以外の選択肢が実質的になくなる。現役時代に年金保険料を支払い続けられる状況になかった人々は、国民年金の満額給付を受けられず、低年金高齢者・無年金高齢者となる。もちろん、生活保護は必要不可欠だ。

 いわゆる「失われた20年」や、2008年のリーマンショックの影響がなかったとしても、高齢化が進行する以上、生活保護世帯は増加する。とはいえ、「公務員定数の削減を」という行政改革の荒波の中で、ケースワーカーを増加させるわけにはいかない。さらに2005年以後は、「ケースワーカー1人あたり80世帯」という社会福祉法の標準から、法的な強制力が薄れた。

 大阪市の元ケースワーカー・Aさんは、この事情を次のように語る。

「2005年に地方分権一括法が制定され、ケースワークは自治体の裁量の大きな自治事務とされたため、社会福祉法の要員の定めは、法定基準としての縛りの効力を失いました。また介護保険法が実施されたため、大阪市は『65歳以上の被保護者については、ケースワークの必要はなくなった。見守りだけでよい』と強弁し、高齢者への配置を少なくする独自基準をつくり出したのです」