京大変人講座Photo:PIXTA

京都大学では、2017年から「京大変人講座」と名付けられたユニークな一般公開講座が定期的に開かれている。京大といえば創立以来「自由の学風」が建学の精神。同講座でも、「京大では“変人”はホメ言葉です!」を合い言葉に、物理学、工学、生物学、医学、芸術学にいたるまで、幅広いジャンルにわたり、毎回濃密で白熱した講義が行われている。
このたび、この超人気講座が書名もそのままに『京大変人講座』という書籍となって刊行された。本連載は、同書の一部を抜粋する形で、紙上講義をお届けしていく。
初回は「サービス経営学」を専門とする京大経営管理大学院・山内裕准教授の講義から。無愛想な老舗鮨屋は、日本的な至れり尽くせりの「おもてなし」とは真逆なスタイルでありながら、客を魅了する。その理由を解くことで「サービスの本質」に迫っていく。

「サービス」=「おもてなし」
と定義するのは単純すぎないか

 私の経営学者としての研究分野は「サービス」です。

 みんなが毎日、レストランで、コンビニで、スーパーで、あらゆる場所で受けている、あのサービスです。サービスのよしあしは、お店の提供する商品と同じくらい、「お客さんがまた来てくれるか」を左右する要素です。

「サービス」といえば、2020年の東京オリンピック招致に向けて、アナウンサーの滝川クリステルさんが「お・も・て・な・し」のプレゼンをしたのはみなさん覚えておられますね? 日本流の「上質なサービス」の象徴として、このキーワードが用いられたわけですが、いったい何が「いいサービス」だと言えるのでしょうか。

 しかし、そもそも「サービス」とは何でしょう。