「戦後最長」とされる現在の景気拡大も、高成長時代の拡大局面と比べてGDPの伸び率ははるかに低く、好景気といってもとても「弱い好景気」だ。

 毎月勤労統計の賃金の伸びがほんの少し下振れしたくらいで、アベノミクスは失敗という声が出てくるくらい、「弱い好景気」なのだ。

 筆者は、日本の個人消費が盛り上がらない要因の1つには、家計消費支出で唯一といってもいい高い伸びを示す通信費の一部が、海外に吸いあげられていることがあると考えている。

 通信費として使われたお金が、国内の企業の所得になり、さらにそれが投資や消費として国内で使われることが少ないからだ。

 日銀がゼロ金利でマネーを市中に大量に供給して、国内の投資や消費を盛り上げようとしているが、企業が国内よりは海外での投資をするように、通信費の一部が米国のGAFAに吸い取られ、日本の経済成長に寄与していないのだ。

 GAFAなどのプラットフォーマーと呼ばれる企業に対しては、独占禁止法で規制しようという取り組みが始まっている。

 不当にデータを囲い込んだり収集したりする行為や、国内で支配的地位を乱用し、取引相手に自らに有利な条件を押し付けたり、反競争的な行為をしたりしているのでは、という問題意識だ。

 またプラットフォーマーの寡占が進む中で、反競争的な行為が技術革新を阻害していたり、日本の企業がGAFAなどの「下請け」化したりして、このままでは日本のイノベーションが衰退するという危機感も強まっている。

デジタル革命が生む
新たな格差構造

 確かにこうした問題への取り組みは重要だと思うが、筆者が考えるプラットフォーマーが生み出す最も深刻な社会問題は、プラットフォーマーが不安定な低賃金労働力を生み出し、またプラットフォーマーに多額のマネーが吸い上げられて、マクロ経済にも影響を及ぼし始めていることだ。

 あたかも、産業革命の時代にマルクスが見た「資本家(ブルジョアジー)が労働者(プロレタリアート)を搾取する」格差構造が、デジタル革命の時代に生まれようとしているのだ。

(経済産業研究所/日本生産性本部 上席研究員 岩本晃一)