まず、現状の関税が続いた場合、今回の追加の関税がないケースと比べて米国で0.15%、中国で0.56%、年間の経済成長率が押し下げられるとしている。
そして、米中間の貿易全額に25%の関税をかけた場合、同様に追加の関税がないケースと比較して米国で0.2%、中国で1.16%成長率が押し下げられると予測している。
この結果から案分して、米国が2000億ドル分の関税を10%から25%に引き上げた場合に、米国経済にはほとんど影響はないが、中国経済は0.2%前後、成長率が押し下げられることになる。
株価の大幅下落が
トランプ大統領の態度軟化を促す
米中の協議が合意に至らなかった場合は、トランプ大統領がツイートしたように、 中国からの輸入品全額に25%の関税がかけられる公算が大きくなる。その場合、中国も米国からの輸入品全額に25%の関税をかけるだろう。
関税引き上げで全面対決となれば、現実には関税だけの影響では済まない。株式市場をはじめ、金融市場の混乱は避けられない。
IMFは、そのケースについても試算している。その結果は、米国0.91%、中国1.63%のマイナスである。現状と比較して、米国で0.71%、中国で1.07%成長率が押し下げられる。米中全面対決となれば、中国経済は6%台前半としている2019年の成長率目標の達成が厳しくなり、米国もかなりの返り血を浴びる。
日本経済にも当然影響する。全面対決で金融市場が混乱した場合、日本の経済成長率も0.47%押し下げられる。
全面対決は回避できないのか。
トランプ大統領は昨年末以降、米中貿易協議の難航などを材料に株価が下落した際、対中国への発言のトーンを軟化させていった。今回の強硬な姿勢への変化も、ニューヨークダウが昨年10月に付けた最高値を更新する寸前まで回復したことが支援材料となっているのは確実である。
その意味で、今回の関税引き上げ表明によって再び株価が今年1月の安値である2万1000ドル台まで大きく下落することが、トランプ大統領の態度を変えさせる最も効果的な材料だろう。中国と合意に至らずとも、少なくとも全面的な対中関税引き上げを思いとどまるきっかけとなる公算は大きい。