それは自主的に「東大に行きたい」と望む生徒が非常に多いからです。誰かに「東大に行け!」と強制されるよりも、自分の意志で「東大に行きたい!」と思う方が脳はがぜんやる気になり、学習効率も良くなります。

 それではなぜ、開成生は東大に行きたいと思うのか。多くの生徒の動機は、自分の憧れの先輩が気づいたら東大に行っていて、先輩の話を聞くと楽しそうな大学だと思うから自分も行きたくなるのだそうです。要するに先輩は、生徒たちにとって一番身近なロールモデルなのです。

 後輩の憧れをさらに強めさせるのが「ようこそ先輩」という催し。学校主催の催しとしては、高校1年生を対象にしたものを毎年1回行なうだけですが、開成は学年による独立性が非常に強いため、学年ごとに毎年開催しているところもあるとか。

「ようこそ先輩」とは、その名の通り開成のOBを母校に招いて、今の自分の学生生活や社会人生活のことを後輩に向けて話してもらう催しです。例えば、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の職員がOBとしてやってきたときは、ロケットの打ち上げの話をすると同時に、「いや、俺が中2のときはね」と開成の生徒だったときの話もしてくれたとか。

 すると生徒たちは、先輩に憧れると同時に「あんなすごいことをやっている先輩も、中2のときは今の僕らと変わらないなあ」と思い、「それなら、僕もいつか先輩みたいになれるかもしれない」とピンときてしまう。そのあとはもう、放っておいても将来に向けて努力をする子になります。

「ようこそ先輩」のように「憧れを具体的な形で見えるようにする」のは、子どもの興味や好奇心、探究心を育むための「餌まき」のひとつなのだそうです。

(脳科学者 茂木健一郎)

※本文は書籍『本当に頭のいい子を育てる 世界標準の勉強法』を一部抜粋して掲載しています。