息子を想う母が始めた「引きこもりコミュニティラジオ」の伝播力引きこもる子を持つ母親が、地域のFMラジオで「不登校・ひきこもり」に関する1時間番組を毎月放送し、反響を呼んでいる

「もっと世の中に知ってもらいたい」
引きこもる子を持つ母がラジオで訴え

 引きこもる子を持つ母親が、地域のFMラジオで「不登校・ひきこもり」に関する1時間番組を毎月放送し、反響を呼んでいる。

 番組を制作しているのは、次男が5年にわたって「社会的引きこもり」状態にあり、地域で「ひきこもり親の会」にも参加している岩手県北上市の後藤誠子さん(51歳)。北上市コミュニティFM「きたかみE&Beエフエム」で毎月第4金曜日に放送している「1人じゃないから」という番組だ。

 きっかけは、親の会に参加するうちに、「引きこもり」について「もっと世の中に知ってもらいたい」「自分にもできることがあるのではないか」と思うようになったことだという。昨年、後藤さんたちが引きこもり家族対象のイベントを開催し、身近に当事者がいて自分自身も生きづらさを感じているというシンガーソングライターの風見隠香さんを北上市内に招いた際、イベントの告知でラジオに協力したのを契機にラジオ局のスタッフが興味を持ち、番組づくりを依頼された。

「北上市では、行政も社協も引きこもり支援にほとんど協力してくれませんので、自分たちでやらなければと考え、ラジオ放送を始めたのです」(後藤さん)

 不登校だった後藤さんの次男は、何とか高校を卒業した後、上京して専門学校に入ったものの、途中で通えなくなった。土日でも学校に通い、最終電車で帰宅していたという。

 2年ほど東京で1人暮らしをしていた。ただ、ほとんど食事をしなくて痩せ細っていたので、連れて帰ってきた。現在は週に2回、多機能型事業所に通っているという。

「『家にいて、つらくないの?』って聞くんですけど、黙ってるんです。高校は進学校だったので頑張り過ぎたのかなって思う」(後藤さん)

 次男は居場所には行きたがらないものの、小学校時代からの友人がいることに、後藤さんはありがたみを感じる。

「だから、私も少し気持ちに余裕があって、周りの人たちに向けて、引きこもりする人たちのことを知ってもらいたいという啓蒙活動ができるんだと思います」