『見えない「ひきこもり主婦」たち』という特集を「週刊朝日」1月30日号で4ページにわたって執筆した。
「主婦」と呼ばれる人たちの間でも、顕在化しない「引きこもり」の実態は広がっている。
そんな「ひきこもり主婦」についての詳細は、同誌に詳しく掲載しているので、そちらのほうを読んでいただくとして、誌面に入りきらなかった話を当連載でも紹介したい。
「ひきこもり主婦」については、2013年の初め頃に当連載で取り上げた。しかし、最近になっても、当時の記事を検索し、「私も同じような状況です」といったメールがたびたび寄せられてくることなどからも、水面下には数多く埋もれていることが推測できる。
これまでに受けた心の傷を親や周囲に口止めされ、ずっと言葉を封じ込めてきた結果、生きづらさを抱え、引きこもり状態になった女性たちがいる。社会にとどまらず、家族ともまったくしゃべらなくなる緘黙(かんもく)状態になると、周囲が本人の思いを聞くことさえも難しくなる。
結婚できたとしても、夫や家族以外の人と心を閉ざし、社会やコミュニティで孤立する“ひきこもり主婦”の状況は、これ以上傷つきたくないからと“あきらめの境地”に至って沈黙する人たちの内面と、本質的に変わらない。
バリキャリからマタハラで退職へ
都内の住宅地に住む30歳代後半のEさんは、中高一貫教育の女子校に通い、大学を卒業した後、大手製薬会社の正社員として入社。営業の仕事をしてきた。
その後、母親の会社を手伝うために退職。2人で忙しく働いてきた。
ところが、母親は身体を酷使してきたこともあって、咳が止まらなくなり、ガンが発覚。ステージIVの告知を受け、会社をたたんだ。
未婚だったEさんは、このことをきっかけに、孫の顔を母親に見せたいと思い、当時付き合っていた男性と結婚。2人の子どもを出産する。
一方で、Eさんは母親を介護しつつ、医療費を稼がなければいけないと考え、新たに薬剤関係の職場に再就職した。
ところが、当時、上の子どもが産まれて7ヵ月くらいで、下の子どもを妊娠していたEさんは、職場で毎日、いじめに遭った。