周回遅れの絶望的な状態から
3位でゴールした佐藤琢磨の快挙
26日に行われた「インディ500」決勝は、終盤に起きたアクシデントによるどんでん返しのドラマもあって見ごたえ十分だった。
なかでも称賛したいのは、やはり佐藤琢磨の驚異的な追い上げだ。インディ500は1周約4キロの楕円状のコースを200周(500マイル=約800キロ)して争う長丁場のレース。平均時速350キロ超の超高速で走るため、30周ほどで給油とタイヤ交換をする必要がある。
このピットストップが勝負を左右する要素にもなるのだが、佐藤のチームは1回目でタイヤを完璧に装着できないミスを犯してしまう。そのため、もう一度ピットストップをせざるを得なくなり、トップとは2周遅れ、33台中31位まで順位を落とすことになった。常識的に考えて上位進出は絶望的な位置だ。しかし、佐藤はあきらめることなく、着実に順位を上げていった。
インディ500は事故などのアクシデントが起きると黄旗が振られ、コースから事故車やその残骸が取り除かれるまでペースカーが先導してゆっくりと周回することになる(これをフルコースコーションという)。佐藤はこの機会にピットストップするといった巧みさを見せつつ、上位との差を縮めていった。そして140周を過ぎた時点で出たコーションで、ついに先頭と同一周回に追いつく。
その後も佐藤は攻めの走りで1つずつ順位を上げていき残り20周、最後のピットストップをした時に4台が絡む事故が発生した。大きなアクシデントのため、この時は赤旗が振られレースは中断。上位の4台が消えたため、ここで佐藤は5位まで順位を上げた。
レースはこの状態から再開されるため、佐藤は先頭まで至近距離の5位から勝負できる状況になったのだ。そしてレース再開。佐藤はここから2台を抜き3位に浮上。さらにアタックを繰り返したが、前を行く2台も隙を見せず、200周を走り終えることになった。
結果は優勝がサイモン・パジェノー(フランス)、2位はアレクサンダー・ロッシ(アメリカ)。佐藤はパジェノーとわずか0.34秒差の3位でフィニッシュした。