映画館の料金は弾力的なのか?

 さて、それでは今回のTOHOシネマズの値上げはどう考えればいいでしょうか?業界全体が一度に値上げを発表したわけではなく、スクリーン数ではイオンシネマズと拮抗する業界トップ級のシネコンであるTOHOシネマズがいち早くこの値上げを表明したことは正解だったといえるのでしょうか。

 まず映画館について一般論で考えてみましょう。映画館の料金は弾力的でしょうか、それとも非弾力的でしょうか?一見すると、別に映画館に行かなくても生活が困るわけではないので、弾力的である気がします。しかし、その気になれば民放テレビを無料で見たり、数百円でDVDをレンタルすれば済むところを、わざわざ1800円という決して安くない値段を払って劇場に映画(主に新作映画)を観に行く層は、そもそも映画が好きであり、100円程度の値上げで行く回数を大きく減らしたりはしないという考え方もできます。

 そもそも、映画は好きな人でも月に3回、4回も行けばかなり多い方です。万円単位の出費増になるならともかく、月あたり300円や400円の出費が増えるからといって、そこまで頻度を下げる人は多くないと考えられそうです。

 また、映画の提供価値を考えた場合、単に「映画を観せる」という単純なものばかりではありません。例えばあの暗くて2時間固定される空間は、デートには最適な空間の1つです。100円くらいの値上げであれば、わざわざ映画館を避けて別の場所に行くカップルはそんなに多くはなさそうです。また、今回は学生料金が据え置きですから、学生カップルなどの入場者数には影響はないものと思われます。

 全作品に占める子ども向け映画の多さも重要なポイントです。子どもにとっては、新作の映画を観に行くことは、仲間に対する話題作りの上でも非常に大切です。その際、子ども(小学生以下)を1人で映画館に行かせるわけにはいきませんから、大人も付き添いで入場する必要があります。これは「必要」なことなので、100円高くなったからといってスキップするわけにはいかないでしょう。

 また、特に平日昼の映画館を支えるのはシニア層です。映画館に来るようなシニア層は比較的可処分所得が多いと思われますので、これも月に数百円の支出増を嫌って観に行く頻度が下がる人は少なそうです。

 こうして見てみると、確かに5%強というパーセント表示で見ると価格アップは一見大きいようですが、ターゲットとなる顧客の属性や、月あたりの出費増が意外にたいしたことがないことを考えると、多くの人が考えるよりは非弾力的である可能性は高そうです。