30年前、北京の天安門広場を横切る巨大な戦車の列の行く手を遮ろうと、ある男性がその前方に立ちふさがった。6月4日の流血の惨事が起こきた翌日のことだ。男性の身元は今でも分かっていない。だがその名もなき男性の反逆を物語る写真は、世界中で権力者への抵抗を表す象徴となった――中国を除いては。中国では検閲され、国民の記憶から消えつつある。中国のソーシャルメディア上では、その「戦車男」の写真は徹底して削除されているもようだ。英国人ジャーナリスト、ルイーザ・リム氏は、天安門事件とその後の記憶抹消に関して、2015年に出版した書籍を書き上げるために調査した際、その「戦車男」の写真を北京の4大学で計100人の学生に見せた。この人物について正確に理解していたのは15人のみで、2人は推測で当てた。リム氏はその自著「The People’s Republic of Amnesia(仮題:記憶喪失人民共和国」の中でこう記している。
天安門30年、習氏が狙う「記憶抹消と歴史改ざん」
有料会員限定
あなたにおすすめ