2009年の9月に、中尾は日本オイルポンプ(以下、NOP)を買収したポラリスファンドから、副社長として送り込まれた。前編に続き、後編では外部から送り込まれた中尾が、どのようにしてNOP社員たちの警戒心を解き、心をつかんでいったかを聞く。

代理店主体から
自ら売る体制を構築中

中尾はNOPの問題点を、高い収益率に満足した「不健全な安定感」だと認識した。この「不健全な安定感」を打破するために、中尾が掲げた目標は、新製品の開発、QCD(クオリティ、コスト、デリバリー)で徹底的にトップの地位を維持・達成すること、海外進出の三つ。前編では前者の二つについて語ってもらった。三つ目の海外進出だが、09年当時、海外売上比率はまだ15%程度だった。

ファンドから来た男【後編】<br />日本オイルポンプ中尾真人社長<br />いかにして送りこまれた人間から<br />NOPの“ヒト”となったかなかお まさと/1987年慶應大学大学院理工学研究科工学修士、同年4月東京電力入社、93年米国Rensselaer Polytechnic Institute大学院でMBA、95年ボストン コンサルティンググループ マネジャー、02年ミスミ(現ミスミグループ本社)取締役、05年MSKパートナーズ パートナー、09年9月日本オイルポンプ副社長、10年2から代表取締役社長。

中尾 今まで海外は言ってみれば、代理店任せだったんです。代理店から注文がくるのを待つというような感じでした。あまり売り込みにも行っていないし、逆に海外から要望が来ても、「そんなのほっとけよ」というのが、2009年の段階でした。お客さんが見えていなかった。

 今、中国に現地法人があるんですが、まずそこの営業の強化をしました。単に丸腰で営業に行ってもダメなので、武器にしたのはやはりデリバリー(前編参照)です。それまで日本から製品を輸出するだけだったので、納期は1ヵ月以上かかった。そこで中国にまずアセンブリー工場を作って、注文があると、ばっと組み立てて出すというモデルを作りました。