吃音に苦しむ大人の
ノンフィクションも

 横井さんは「著者の重松さん自身も吃音症で、悩んだ経験を基にして語られる小学校から高校生までの物語は、吃音のある子どもにとって、『自分はこういう風に生きていけるのかもしれない』という予感を感じさせるでしょう」と、特に中高校生くらいの子どもにお勧めしたい児童文学とのことだった。

 一方、重松さんがレビューで推薦していた本、『吃音 伝えられないもどかしさ』(近藤雄生著)は、衝撃的な内容だ。

『きよしこ』は重松さんの自伝的な物語(左)、『吃音 伝えられないもどかしさ』(右)は、近藤雄生さんが約5年をかけ「吃音症」に悩む人々を取材、雑誌に不定期連載していた記事をまとめた本

 こちらは『きよしこ』のような少年の日々の出来事を語る静かな物語ではない。吃音に苦しみ死を選んだ若者の人生など、大人になっても吃音に悩む人々の姿が生々しく描かれたノンフィクションで、子育てや仕事についてなど日常生活での偏見といった視点もあった。

 この本についての感想を横井さんに聞くと、「この本には私も登場しています」との返事が返ってきた。「一人ひとりの事例に向き合って、丁寧に取材を続けた結果、吃音のある人が直面している『リアル』が見事に描かれていると感じます。吃音のある人自身が努力することも重要ですが、社会に変化を求める必要性があることを示した本でもあるように思います」。

 結局、吃音が「悪いこと」でもなく「劣っているわけ」でもないという当たり前の意識が広がれば、話すことをあきらめ消極的になってしまった人々の希望につながっていくということだろう。特に子どもたちがその意識を持つことができれば、吃音の子の未来は大きく変わっていくだろう。そのためにはまず、大人が理解を深めていく態度を子どもたちに示すことが不可欠だ。

 吃音は個性の一つとして受け止める、そんな多様性を理解する心が広がれば、それは吃音だけでなく全ての子どもたちの幸せにも作用するはずだ。

(まついきみこ@子どもの本と教育環境ジャーナリスト/5時から作家塾(R))