例えば、「カラオケボックス室数」だ。他にいくつも娯楽施設がある上に地価が高い大都市と、他の娯楽が少なく安い土地がいくらでもある地方都市とで比較しても、果たして「豊かさ」を表すものになるのだろうか。

 また谷岡氏は、このランキングの計算に「ウエート(重み付け)」が考慮されていないことも指摘している。つまり、すべての指標が同列に扱われ、同じ配点になっているのだ。

 つまり、こういうことだ。すべての指標が「10点満点」だったとする。すると

自治体A:医師数10点+カラオケボックス室数1点=11点
自治体B:医師数1点+カラオケボックス室数10点=11点

 だった場合に、自治体Aと自治体Bは同じ「豊かさ」と判断される。 

 遊ぶ場所はたくさんあるが医師不足と思われる自治体Bと、十分な数の医師を抱える自治体Aが同じくらい「豊か」かどうか。どう考えても怪しいのではないか。

 本書によると、案の定、このランキングには、下位にランクされた県や市から批判や抗議があり、経済企画庁はそれに有効な反論ができなかった。このことも原因の1つとなり、ランキングの集計と発表は、1998年を最後に中止となったそうだ。

「相関関係」があっても、
「因果関係」があるとは限らない

 ランキングに限らず、2つ以上の変数を比較して結論を出すような統計データを見る時に、必ず気をつけるべきことがある。「相関関係」と「因果関係」の違いだ。

 この2つは、ともすると混同しがちだ。しかし、「因果関係」が「XだからYである」といった原因と結果の関係であるのに対し、「相関関係」は「Xがこう変化する時に、(必ず)Yはこう変化する」といった現象面での関連性を示しているに過ぎない。

 例えば、冒頭で紹介した「チョコレートをたくさん食べるほど、ノーベル賞受賞者が増える」が、相関関係であるのは明らかだ。チョコレート摂取量が変化した時に、ノーベル賞受賞者数も変化しているからだ。

 しかし、この場合に、チョコレート摂取量とノーベル賞受賞者数の間に直接の因果関係があるかどうかは、わからない。おそらくないのだろう。