フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)はルノーに対する経営統合の提案を撤回した。幸運が勇者に味方することは米自動車産業では少ないのだと痛感させる出来事だった。筆者が自動車業界の担当を離れたのはゼネラル・モーターズ(GM)が経営破綻したころだった。5年後に戻ってきたとき、新聞の見出しを飾っていたのは自動運転車やライドシェアなど新しい移動形態への期待だった。しかし業界の実情はほとんど変わっていない。米自動車業界は今も、実質的に収入の全てを金融業またはトラックやスポーツ用多目的車(SUV)に頼っている。シリコンバレーが移動手段のイノベーションをリードしていることは明白であり、その一方、自動車業界の幹部は消費者が実際に欲しがる電気自動車の開発に消極的な態度を取り続けている。