寝る前1分とは、「さあ、これから眠りに入ろう」と、意識して睡眠に入る直前の1分です。ベッドサイドに座っている場合もあれば、布団の中に入っている場合もあるでしょう。照明はベッドサイドランプや小さなスタンドランプだけで、部屋全体の照明は消灯している状態。つまり、「もう今日の活動は終わりです」というときです。
ほとんどの方は、本当にもう何もしない態勢になっていると思いますが、ここであと1分だけ“最後の活動”をするのです。
何をするかというと、夢活動の準備、睡眠中、脳に仕事をしてもらうためのオペレーションをします。意識は眠っていても脳が仕事をする――この状態をつくるための1分です。
大事な勉強をしたあとは
「勉強終了!」として寝るのが一番
ところで、学習心理学の研究成果に「逆行抑制」という概念があります。これは、先に学習した事柄(第一学習)の後に別の学習(第二学習)をすると、先に学習した事柄(第一学習)について記憶の定着が妨げられるというものです。
たとえば、英語の勉強をした後にすぐ中国語の勉強をすると、英語の学習効果が妨げられる。つまり、英語に関する記憶が薄まってしまうという現象のことです。これは、とくに類似した学習内容のときに起こります。
私の体験でも、社労士受験のとき、厚生年金保険法の後に国民年金法の勉強をすると、どちらの規定かわからなくなって困ったことが再三ありました。
こう書くと「私は一晩に分野の異なる勉強をするけど、ちゃんと覚えている」と反論されるかもしれません。私も91の資格試験にチャレンジしていた最盛期は、勉強期間が重なるケースもあり、2科目以上の勉強をしたこともあります。ただ、勉強科目を替えるときには、間に必ず休息を入れていました。
間に入れる休憩時間は人によって異なると思いますが、学校時代の授業間の休憩時間が10分か15分だったように、少なくともそのくらいは脳を休ませてあげないと疲れてしまうでしょう。それに科目から科目への脳のスイッチ転換がうまくいきません。
なにしろ起きているときの脳には、五感からリアルタイムにさまざまな情報が入ってきて、それでなくても忙しいのですから。
私は、学習心理学の「逆行抑制」なるものを最初から知っていたわけではありません。なんとなく前の勉強効果が薄まるのではないかと恐れていたのは、後から考えると、本能的に逆行抑制を感じていたのだと思います。
そこで、やむをえない状況になっているときを除いて、大事な勉強をしたあとは「これで本日の勉強は終了」と自分に宣言して寝てしまうようにしたのです。
すると、朝起きてからも鮮明に勉強した事柄を覚えていることがわかったのです。