人間は、脳あってこその存在。人の行動、思考、感情、性格にみられる違いの数々は、すべて脳が決めているのです。「心の個性」それはすなわち「脳の個性」。私たちが日常で何気なく行なっていることはもちろん、「なぜだろう?」と思っている行動の中にも「脳」が大きく絡んでいることがあります。「脳」を知ることは、あなたの中にある「なぜ?」を知ることにもなるのです。この連載では、脳のトリビアともいえる意外な脳の姿を紹介していきます。

記憶にも
いくつかの種類が

 ひとことで「記憶」と言っても、そこにはいくつかの種類があります。その1つに「陳述的記憶」と呼ばれるものがあります。これは言葉や図形など、頭で覚える記憶のことをいいます。

 「陳述的記憶」はさらにタイプが分けられ、その1つは「出来事記憶」と呼ばれています。

 「出来事記憶」とは、いってみれば記念碑的な記憶のことです。たとえば、少年少女時代の初恋の思い出や、旅先で眺めた忘れられない風景などがそれにあたります。

 また、この「出来事記憶」にも2つのタイプがあります。たとえば先述した、少年時代の初恋の思い出などは「言語的な記憶」、旅先で眺めた忘れられない風景は「非言語的な記憶」にわけられます。

 他人の顔を記憶するのも、その非言語的記憶の一種なのです。

 しかし、同じ非言語的記憶であっても、顔を記憶することは旅の風景などを記憶するのとは基本的に異なっています。不思議なことに、人間には顔を記憶する特別なシステムがあり、そのシステムによって他人の顔を判別しているのです。

 人間の顔に反応するのは、「側頭連合野」という領域です。

 もともと「側頭連合野」は、形や図形を認知する領域とされ、視覚情報から得たモノの形などを、意味あるものとしてとらえる領域です。そのため、この部分が損傷すれば、モノを眺めていても、それが何かを理解することはできなくなります。