今後、利下げが実施された場合の
ドル円へのインプリケーション

 以上のように、米利下げ局面下で、ドル円の方向性に決まったパターンは存在しない(利下げは必ずしもドル安円高をもたらさなかった)といえる。仮に今後、米国で利下げが実施されると、上記②のケースのように少数回の小幅利下げとなる可能性が高いと思われ、過去のケースを参考にすると、むしろドル高圧力が強まるだろう。

メインシナリオ:
米景気拡大が続く中での小幅利下げ=ドル安は限定的

 現在、米景気一致指数の上昇は続き、米景気先行指数もピークアウトしていないことから、今後2年程度は米国景気の拡大が続く可能性が高いと思われる(上記②のケースに類似している)。こうした中で利下げが実施される場合、米国景気の拡大が長期化するとの期待が高まるだろう。

 こうした期待は、米国株の下支え要因にもなるため、利下げに伴うドル安効果は限定的で、むしろ長い目で見ればドルが上昇すると考えられる。市場ではすでに年内(19年中)3回程度の利下げが織り込まれており、6月あるいは7月のFOMCで利下げが実施されたとしても、(市場が十分に織り込んでいない)連続的で大幅な利下げが示唆されない限り、ハト派のサプライズになりにくくなっている。この面からもドルの下落は限定的となる可能性が高い。

リスクシナリオ:
米景気の後退入りに伴う連続的な大幅利下げ=ドル安局面入り

 一方、中国やメキシコに対する関税引き上げや自動車に対する25%の関税発動などにより米景気が急速に悪化し、連続的で大幅な利下げを実施せざるを得ない状況に陥ると、上記⑤のケースに該当する展開となるだろう。この場合、FRBによる利下げに、米国株の下落がともなう形となり、ドルは下落局面に入ることになる。しかし筆者は、こうしたシナリオが実現する可能性は現時点で低いとみている。

(みずほ証券チーフ為替ストラテジスト 山本雅文)