住宅地盤改良工事の7割は不要と豪語<br />第三者チェックで工事を減らす革命児<br />地盤ネット社長 山本 強Photo by Toshiaki Usami

 1990年、大学を卒業した山本強が就職したのは証券会社だった。「いずれ起業家になるために、まずは営業の仕事を極めよう」と意気揚々と臨んだが、飛び込み営業、電話営業とも想像を超えるきつさだった。しかもバブル崩壊で株価は軒並み落ち込んだ。

 がむしゃらになって推奨銘柄を徹底的に研究する中、株式公開から間もない低価格住宅メーカー、アイフルホームテクノロジー(現LIXIL住宅研究所アイフルホームカンパニー)に引かれるようになった。思いは募り94年、同社に転職した。

 心機一転、フランチャイズ加盟店の指導や育成に励んだが、97年のある日、“問題児”とされる加盟店オーナーとケンカをしでかした。正義感をあらわに闘った山本に周囲から陰の拍手はあったが、トラブルを起こした事実は重かった。翌月、子会社への出向命令が下された。

「うだつの上がらないサラリーマンの典型」と当時を自嘲気味に振り返る山本。しかし、正義へのこだわりと左遷とも取れる異動が後の起業へとつながるのだった。

地盤ビジネス急成長も
過剰な改良工事と正義感の間で葛藤

 出向先であるアメリカンホームシールドジャパン(現ジャパンホームシールド)では、数人で新規の地盤ビジネスを展開することになった。

 背景には欠陥住宅が社会問題になっていたことがある。住宅が傾いた原因を調べると地盤にごみが埋まっていたり、造成に問題があったというケースが散見され、警戒の目は建物だけでなく地盤にも向けられるようになった。

 これによって「地盤ビジネス市場」が誕生した。地盤会社は地盤調査部門と地盤改良工事部門を抱え、調査結果を基に地盤改良の必要がある場合に改良工事も請け負った。