これだけの制度改正がわずか10年弱の間に行われたのだが、中でも増税の影響は大きかった。ほぼ基礎年金のみの妻を持つ夫の場合、控除(税金の非課税枠のこと)を積み上げると、2003年までは年金収入約300万円まで税金がかからなかった。つまり、当時の「公的年金収入の非課税ラインは約300万円」だったということ。

 2004年、2005年の複数の所得控除廃止・縮小により、非課税ラインは一気に100万円下がり、200万円程度の年金収入から課税されるようになった。

 先の年金収入300万円のケースを振り返ると、1999年は、国民年金保険料が10万円程度で、所得税と住民税はかかっていない。

 一方、今年の試算では、所得税・住民税が約12万円、国民健康保険料・介護保険料が約34万円。税金・社会保険料の負担が、1999年の10万円から46万円までアップしている。その結果、手取りは36万円減り、290万円から254万円となった。

 メディア取材を受けた際、この試算を見せると記者は「額面収入の1割以上の減少とは!年金生活者の暴動が起こってもおかしくないですね」と言う。私もそう思う。

 暴動までは起こらずとも、なぜ年金生活者から「声」が上がらないのか。それは、年金の手取り額は自分で計算しないとわからないからだ。給与の手取りも同様だが、「手取り額」はどこかに記載があるわけではなく、いくつかの書類から数字を拾って、電卓を叩くことではじめて算出できる。

 現在は、所得税・住民税、介護保険料は、年金から天引きされるのが原則だが、20年前、住民税は天引きではなかった。国民健康保険料は、自治体により年金から天引きされる場合と、自分で納付する場合がある。

 家計簿などで、毎年の年金収入、税金、社会保険料を経年比較するようにしていれば「年金の手取りが減っている!」と自身で把握することができるが、こうした作業をしている人はほとんどいないだろう。

「使える年金額が減っている」と多くの高齢者が実感しているが、減少の理由はよくわからない人が大多数というのが現状だ。