銀行交渉のポイントは競わせること

「借りたら返すな!」「ムダな借金はするな!」中小企業の財務戦略、どっちが正しい?(後編)古山喜章(ふるやま・よしあき)
アイ・シー・オーコンサルティング代表取締役社長
1965年、大阪市生まれ。1989年、関西大学卒業後、中堅菓子製造販売会社に就職。急成長するなかで、経理、総務、人事、購買、システム、生産現場改善など、あらゆる管理部門業務に転換に着手する。2006年、アイ・シー・オーコンサルティングに参加。クライアントの財務改善、人材開発、システム改善などに注力する傍ら、資金繰りの要となる銀行交渉の実態を深耕し、指導を重ねる。2011年より「後継社長塾」(日本経営合理化協会)の副塾長を務める。中小企業の後継者育成とともに、事業継承の問題解決に数多く携わる。2014年、同社の代表取締役就任

大久保 銀行の行く末は不安ですが、経営者としては借入しやすい環境は歓迎すべきところです。銀行との交渉では、どんなことをしていますか?

古山 メガ、地銀、政府系と、色の違うところを3行くらい選んで競わせるのが基本です。その際、「できるだけ金利を低く」とお願いしても意味がありません。要望は明確にすること。

 たとえば、「金利はタイボ(TIBOR)+スプレッド(上乗せ金利)で設定してほしい」「個人保証・担保なしで」、そういうふうに要求すれば、「この経営者はわかっているな」と相手は思うはずです。

大久保 なるほど。

古山 なかでも本命の金融機関には、「他行はこの条件を出してきたけど、どうします?」「本当は御行から借りたいんだけど……」と交渉します。

大久保 うまいですね。私のお客さんは、そこまで強く交渉できないところが多いです。なにせ若い企業で、財務が盤石じゃない場合も多いですから。

 若い企業の場合は、0.1%でもいいから借りるときに金利を下げてもらい、実績をどんどん出していくことを優先しています。特に3月や9月は、銀行が成績を上げるために有利な金利を提示してくるので、そこで借りる。そしてしばらくしたら交渉して下げてもらう、といったパターンが多いですね。

古山 3月や9月の決算期はポイントですね。決算期は銀行自身が数値をよくしたいと考えていますから、協力する姿勢を見せることで交渉を有利に進められます。「今回この金利で決めてくれたら、今度の9月末に協力して借りますよ」、そんなふうに交渉できます。