利益よりも投資を優先してきた米IT大手、アマゾン・ドット・コムが変貌しつつある。本業のeコマース事業以外の高収益事業の成長で、巨額投資と薄利主義脱却の両立が見えてきた。(ダイヤモンド編集部 大矢博之)
空飛ぶ宅配ドローンに、レジなし店舗の舞台裏、倉庫を走り回る何百台もの仕分けロボット──。
6月上旬、米IT大手、アマゾン・ドット・コムがラスベガスで初めて開催した人工知能(AI)イベント「リ・マーズ」。そこでは、アマゾンの未来に向けた取り組みが次々と披露された。
とりわけ、講演に登壇したジェフ・ベゾスCEO(最高経営責任者)が熱を入れたのは宇宙ビジネスである。自ら創業し、月面着陸計画を公表した宇宙開発ベンチャーのブルーオリジンについて、「未来の世代のために、宇宙のインフラ構築を支援する」とベゾスCEOは意義を強調。「月にアマゾンの倉庫を造るのか」という問いに対しては、「最初の配送は液体酸素と液体水素だ。品ぞろえは少ないだろうね」とジョークで切り返し、会場を沸かせた。
配当金は出さず、成長分野への投資を優先するスタイルを貫くアマゾン。その象徴が巨額の研究開発費で、2018年12月期は288億ドル(約3.2兆円)と世界でもトップクラスだ。トヨタ自動車の18年度の研究開発費が約1兆円であることと比べれば、そのすさまじさが分かるだろう。
ただ、これまで収益の大半を投資につぎ込み、利益を出すことに無頓着だった“薄利主義”のアマゾンに変化が起き始めた。
18年の営業利益は前年から約3倍の124億ドル。営業利益率も5.3%と前年から3ポイントも改善し、収益力のある企業へと変貌しつつあるのだ(図1)。