英デ・ラ・ルーがマルタの紙幣・偽造防止印刷工場に導入した新型の印刷機英デ・ラ・ルーがマルタの紙幣・偽造防止印刷工場に導入した新型の印刷機 Photo:REUTERS/アフロ

 映画「ルパン三世:カリオストロの城」で、城の地下に下りた銭形警部が次のように叫ぶシーンがある。

「おおっ! 何だここは? まるで造幣局ではないかあ!あそこにあるのは…ありゃー、日本の札! これは偽札だあ!」「見てくれ、世界中の国の偽札だ! ルパンを追ってとんでもないものを見つけてしまった!」

 映画の中でカリオストロ公国は人口3500人、世界で一番小さい国連加盟国という設定だったが、なぜか国際政治に独特の影響力を持っていた。同国はその高い紙幣印刷技術を用いて、ひそかに偽札製造を請け負っていた。その顧客には主要国政府も含まれていた。敵対国の経済混乱を狙う国はカリオストロ公国に相手の通貨の偽札を発注していたのである。

 映画のような偽札製造ではないが、多数の国から紙幣の印刷を受託している民間紙幣印刷会社が実在している。昨年世界で発行された紙幣1710億枚のうち188億枚は高度な技術を持つそうした企業によるものだ。最大手の英De La Rue(デ・ラ・ルー)の同ビジネスの売上高は年約550億円に上る(同社決算報告書による)。他にもドイツやフランスに大手紙幣印刷会社がある。