カジノ産業と若者の関わりを探るシリーズ企画の第3弾は、世界的に見ても珍しいIR(統合型リゾート)について専門的に学べる修士向けのコースを持つ大阪商業大学。同大の経営革新専攻に設けられた特別教育研究コース「IRマネジメント」コースの開設の経緯や、在籍する社会人院生のエピソードを聞いた。(清談社 松嶋千春)

IR=カジノは間違い!
運営に必要な未知のノウハウとは

IR施設は、カジノのみならず、レストラン、ショッピングモールなどを含みます。
カジノを含むがゆえに、IR施設は、一般的な法律や会計の知識があるだけでは運営できない Photo:PIXTA

 そもそもIRとは、統合型リゾート(Integrated Resort)の略称で、国際会議場、ホテル、商業施設、レストラン、ショッピングモール、カジノなどが一体となった、複合型観光施設を指す。日本ではカジノばかりが前面に出ている印象を受けるが、カジノはあくまでもIRの一施設という位置づけだ。

 大阪商業大学大学院に「IRマネジメント」コースが開設されたのは、2015年4月のこと。学長の谷岡一郎氏は、本コース開設の経緯を次のように語る。

「当時、IR法案が俎上にのぼり、法案が通るのは時間の問題でした。そうした状況のなか、IRにおいていちばん人材が足りないのはマネージャークラス。海外のオペレーターと英語で意思疎通ができ、ちゃんと指示や交渉ができる各部門の責任者に相当するレベルの人材はなかなかいないのが実情です」(谷岡氏)

 IRの一部の施設にフォーカスするなら、カジノにおけるディーラー、レストランにおけるウエートレス、ホテルにおけるポーターといった職種は、日本にある既存・類似の施設から人材を引っ張ってきて育成することも可能だ。

 しかし、IRという統合型施設を全体で捉えた場合、それは今まで日本になかったまったく新しい産業となる。IRには我々が聞いたこともないような新しい職種が700~800種類ほど存在するという。たとえば会計ひとつとっても、カジノではさまざまなステップがある。信用貸しのようなクレジット発行をすることもよくあるのだが、どの段階でどのように処理するかは、日本で会計士や税理士の資格を持っていてもできるわけではないのだ。

「本コースでは、単一の職種に限定して学ぶのではなく、IRに関する全般的な知識を身につけたうえで幅を広げていく内容になっています。ラスベガスのネバダ州立大学と連携し、ギャンブル依存症やセキュリティーなどを座学と実地研修を通じて学ぶ留学プログラムも設けています」

「『MICE(国際会議や研修などのビジネストラベル)部門にいるからカジノやエンターテイメントを知らなくていい』ということはない。お客様はいろんな施設に足を運ぶため、各部門がどういう働きをしているのかをちゃんと把握していないと、橋渡し役となる各部門の長は務まりません」(谷岡氏)