若者の提案に「なんだそれ」は無しだPhoto by Masato Kato

IT企業との「競争と協働」がより深化していく中で、三井住友フィナンシャルグループはこの波をいかに乗り切るのか。太田純社長にその答えを聞く中で、「銀行員にはITリテラシーが足りない」という問題が垣間見えてきた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 田上貴大)

――昨今、他業態から金融業界に挑戦する企業が増えています。彼らと競争する部分で一番危機感を覚えていることは何ですか。

 とても大きなプラットフォーマーがいて、そうした存在が日本で銀行を買って進出しようとしてくるのは脅威ですね。ただ、それはおそらくないと思っています。なぜなら、銀行はそんなにもうからないから。

 今年2月、香港で各国の中央銀行の総裁とグローバル金融機関のトップが集まる会合がありました。そこで議論をする中で、一つのテーマが(金融とテクノロジーの融合分野を示す)フィンテックやイノベーションでした。

 そこで、香港MA(=Monetary Authority)の長官がこんなクロージングのあいさつをしていました。「実は5年前に、同じ議論をしていた。5年前に私たちのところにGAFAが大挙して入ってきて、私たちなんてあっという間に一蹴されるのではないかと議論した。ところが、5年たっても何も変わっていない。これはなぜか今日私は分かった、もうからないからだ」と。GAFAが参入してきて、銀行業務に取り組んだところで、彼らが求めているROE(自己資本利益率)の水準には全く行かないだろうという話ですが、これはその通りだと思います。

 別に危機感がないわけではないのですが、そんなに簡単に参入できる業種ではないと思っています。裏を返せば、私たちはプラットフォームを持っているので、それを使ってどれだけ質の高い、安価なサービスを提供できるかというところで私たちにもメリットはあります。

――反対に、共存という観点だと、どういう領域でなら共存できるイメージですか。

 おそらく、私たちが今後変わっていく方向性は三つあります。一つは情報産業化していくこと。今、銀行はバランスシート上の貸出金などのハードなアセットを使って商売をしていますが、これからはインタンジブル(無形)のアセットである情報をどうマネタイズするかが一つの方向性だと思います。

 二つ目はプラットフォーマーになること。それは、すでにあるプラットフォーム機能をどうマネタイズするか、どうやって使いやすいプラットフォームにしていくか、ということです。

 三つ目はソリューションプロバイダーになること。どうやって企業や個人の課題、問題、悩みに対して解決策を提案できるようになるかです。この三つの方向性は、それぞれバラバラではなくお互いに関連し合っています。そういう方向性に向かっていくときに、私たちが得意とする金融という機能を、どう生かしていくかという発想が必要になってきます。

 金融機関だからこういうことをしましょう、ということではなく、すでに(上編で)高齢の方の例を挙げましたけども、こういう方向に私たち自身が変わっていかないといけない。その中で私たちが得意とする金融という機能をどう生かすか考えると、いろいろなアイデアが出てくる。今後、いろいろな外部の人たちと協働していく、という道があるんだと思います。

――職員が新規事業をプレゼンするCDIO(Chief Digital Innovation Officer)ミーティングを開催しているとのことですが、その場でも外部と協働するというアイデアを持っている人が多いですか。

 多いですね。今だと、銀行法で業務範囲が限られていますから。でも、これをやるには、こういう人たちが必要なんですといった提案があります。