引きこもり経験者を講師とする「ひきこもり学」と題する講演会を開いたところ、会場は立ち見が出るほどの盛況ぶりだったという(写真はイメージです) Photo:PIXTA

「引きこもり当事者」が教える
引きこもり経験から学んだこと

 何もないところから居場所を立ち上げ、維持していくのは並大抵のことではない。

 しかし、そんな地方の都市で、生きづらさを抱えた当事者たちが居場所をつくり、引きこもり経験者を講師とする「ひきこもり学」と題する講演会を開いたところ、川崎市の児童らの殺傷など一連の事件の影響もあって、定員を超える67人が参加。会場は立ち見が出るほどの盛況ぶりだったという。

「社会には、居場所がない。皆、ひっそりと息をひそめて、自分を責めている」

 6月23日、大分市内でこのように「ひきこもり当事者が、ひきこもり体験から学んだこと」という趣旨の講座を企画したのは、自らも当事者である佐藤尚美さんらがつくった「居場所~特性を生かす道~」。この日、実名で顔を出して講師を務めた桂木大輝さん(24歳)も、主催者の1人だ。

 企画したきっかけは、KHJ全国ひきこもり家族会連合会が昨年、大分と宮崎の支部で開いた「つながる・かんがえる対話交流会」に、佐藤さんもファシリテーターとして参加したところ、「当事者の話を聞きたかった」という話を何度も聞いたからだという。

「確かに地方では、引きこもり当事者の話を聞く機会はなかなかない。そこで、当事者の中でも講師に合っていそうな桂木さんに声をかけたんですが、最初は『恐い』「と断られました。でも、『引きこもりながら自分を売って行く方法もあるよ』『居場所のみんなが全力で守るから』ってアドバイスして……。それでも、批判されるのでは?と恐がってました」(佐藤さん)

「居場所~特性を生かす道~」では、おしゃべり会を開催している。そこで佐藤さんは、桂木さんにもともと好きなコントの時間を割り当てた。すると、参加者たちが桂木さんのコントを評価。新聞記者から取材もされた。そのとき、本名を出すことを迫られ、悩んだあげく、「自分が広告塔になって、色々な傷ついてきた人たちが活動している私たちの居場所を知ってほしい」と決意したという。

 会場は、県の社会福祉協議会に協力してもらい、無料で借りることができた。また、ツイッターでたまたま知り合ったIT企業、ゾディアックデザイン株式会社の社長から「面白いことをしている。お手伝いしましょうか」と声をかけられ、協賛金を出してもらえた。それでも講師代が出なかったため、当日の寄付金で賄った。