「クラウドファンディング」を生かすには?

―――『NEW POWER これからの世界の新しい力を手に入れろ』では、ニューパワーをうまく使ってクラウドファンディング(インターネットを使った不特定多数による資金調達や支援)を成功させている事例が出てきます。とはいえ、クラウドファンディングはどのケースでもうまくいくとは限らないと思います。クラウドファンディングは、従来の資金調達とどういう違いがあるのでしょうか?

ティムズ:これまで投資をしたことがある人なら、うまくいく投資といかない投資があることはわかっているでしょう。クラウドファンディングが興味深いのは、次の理由です。

 一つは、多くの人が少額の投資で関わることができる点です。これは資本を開拓する新しい方法で、マイクロファイナンスと同じようなインパクトがあります。ニューパワーのポジティブな応用と言えるでしょう。

 ただ、まさにその点に危険性があります。1万人に100ドルを、ある商品に投資するよう説得することは簡単です。しかし、何の監視もありませんし、規制もありません。ガバナンスがほとんどない状態です。投資額が少ないため、失敗しても誰も文句をいわず、気にしない。クラウドファンディングにはプラス面もあれば、こういうマイナス面もあります。

ハイマンズ:クラウドファンディングにも、会社のために資金を集めるのと同じスキルが必要です。

 オールドパワーで大きな映画をつくる際は莫大な資金を集めないといけません。しかし、クラウドファンディングでは、そうしたときとは異なるスキルも必要です。

 会社や映画の資金集めは、お役所的な事務手続きをこなし、エリートをナビゲートする能力が必要ですが、クラウドファンディングの場合には大勢を刺激する能力が必要です。

 何を達成しようとしているかにもよりますが、両方の方法が必要です。われわれが本書で書いたのは、オールドパワーの方法はもう必要ないということではなく、誰もが新しい影響力が必要であるということです。

―――クラウドファンディングの場合、どうやって大勢の人を説得したらいいのでしょうか。

ハイマンズ:やるべきことを人びとに与えないといけません。本書では、ただポテトサラダをつくりたいと考えた男性の例を挙げました。彼はクラウドファンディングで5万ドルを集めました。

 彼が実際にやったことは、資金集めのそれぞれのレベルで、寄付した人たちを関わらせたことです。ユーチューブで寄付をしてくれた人たちの名前を挙げて、その人たちとレシピをシェアした。どのレベルでもそうしたことを実行したのです。これの行為はある意味で、クラウドファンディングのsatire(皮肉ったもの)です。人びとは、誰でもこの馬鹿げた実験に関わることができるというアイデアを気に入ったのです。

―――財政難に見舞われた日本の地方では、老朽化した校舎の建て替えが困難になっているところがあります。これをニューパワー、たとえばクラウドファンディングを使って解決することは可能でしょうか。

ティムズ:ニューパワーを使って資金集めをしている例は、世界中にたくさんあります。ただ、社会にはオールドパワーを使って実行されるべきことがある。とくに政府を関わらせないといけないこともあります。

 また勘違いしやすいのは、政府にニューパワーを使わせてすべての仕事をやらせようとすることです。それらの仕事を中央集権的にやらずに、分散化して他の人に支払いをさせようという人がいます。

 しかし、ニューパワーの見込み(可能性)とオールドパワーの責任に関して、真のバランスがあると思います。安全な生活環境や手ごろな住宅を保証するのは政府の役割であり、その責任は依然として重要です。

ハイマンズ:もしどこかの学校がクラウドファンディングによって校舎の建て替えに成功すれば、どの学校もクラウドファンディングを使おうと考えるでしょう。ただ、そうなると、race to the bottom(底辺への競争)が生じる恐れがあり、緊張が生じます。校舎を建て替えないで、ペンキを塗りかえるだけでいいという学校も出てくるかもしれません。

 政府によって十分なリソースが提供されない場合は、むしろ政府に仕事をさせるように、ニューパワーのスキルを使ってロビー活動をすべきです。