両方のパワーを意識的に使うトランプ

―――やや皮肉な言い方をすれば、権威的、権力的なオールドパワーの価値観の具現者であるトランプは、ニューパワーを使って大統領になったといえます。既存メディアを敵視し、ツイッターを使って自ら発信することで、強固なコミュニティをつくり上げている。

ハイマンズ:そういえます。トランプは両方のパワーを意識的に使って、見事に大統領になりました。彼はとても利口です。クラウド(群衆)の動員がうまい。オールドパワーのやり方でクラウドを動員させるだけではなく、そのクラウドに主体性を与えることで、敵に対する攻撃戦略のアイデアを出させ、その声を高めることに長けている。トランプは自分のクラウドとsymbiotic relationship(共生的関係)を大いにもっています。

「私はあなた方の問題を解決するためにここにいる。私は社会の自然なヒエラルキーを復活させる」とトランプはいいますが、これはオールドパワーとニューパワーのまさにコンビネーションで、魅惑的な手法であることがある意味、世界中で証明されています。

 インドのモディ首相、ブラジルのボルソナロ大統領を思い起こしてください。このようなリーダーたちは、両方の戦術をいろいろな方法で使っています。日本でもその作戦を使う政治家が出てくるかどうか。これは注目に値します。

―――トランプはそうした戦術を意識的にやっているのか。あるいは動物的な本能でやっているのでしょうか。

ハイマンズ:動物的な本能だと思います。

ティムズ:トランプは、ソーシャルメディアのツールを使って、大衆とのコミュニケーションをとるということがどういうことか、理解しています。

―――これまた皮肉ですが、アンチ・トランプの『ニューヨーク・タイムズ』は、トランプによって延命できているともいえます。トランプが大統領になったことで、同紙はオールドパワーとしての権威が復活し、購読者数が急上昇して潤っています。

ハイマンズ:それは当たっていますね。

ティムズ:『ニューヨーク・タイムズ』などの定期購読者がかなり増えたことは間違いありません。ただ、それでも長期的な問題に直面するでしょう。同紙が勝利宣言をするのはまだ早いと思います。

ハイマンズ:『ガーディアン』は購読者を(ジャーナリズム活動に参加させる)メンバーに変えようとしています。『ニューヨーク・タイムズ』もそれと同じことをしています。読者はたんに購読料を払うだけではなく、それを超えて何ができるか。自分の専門知識をいかに提供できるかを考える。

 本書では『デ・コレスポンデント』のようなオンラインメディア・モデルについて書きました。どの読者も肩書や経歴を示した上で、コメントを出すことができる。「私は医者でこういうバックグラウンドがある」というふうに先に示すのです。すると、いい加減なことがいえなくなる。コミュニティの一部になるのです。

『ニューヨーク・タイムズ』にとっての試練は、トランプ時代が終わったときに読者を引き留めておくものがあるか、同紙が読者との関わりについて真剣に受け止めているかにかかっています。まだその段階には達していないと思います。

―――ニューパワーをダースベーダーではなく、ジェダイの騎士の武器とするためには、われわれは、どんな注意をすべきでしょうか。

ティムズ:ニューパワーをいいことに使うために、世界中で新しい世代のジェダイを訓練しなければなりません。ニューパワーが悪の帝国の手に入らないようにしなければなりません。

―――でも、つねに罠がありますね。

ハイマンズ:そうです。「#MeToo」ムーブメントのような社会運動には、プレスリリースを出すようなこととはまったく異なるスキルが必要です。人を関わらせないといけませんし、これまでとは異なる力関係を必要とします。そういう障害にぶつかったときを含めて役立つ知識を提供するものとして、本書を書いたのです。

(以上『Voice』 2019年8月号掲載「オールドパワー対ニューパワー」より)