おいしいけれど
バイトでも作れるだんご
しかし、大きなネックがあると感じていました。
それは、従業員が職人ではなくすべてアルバイトで、たった1日作り方を学ぶだけでだんごを作れるようになってしまうことです。
だれにでも簡単に真似ができてしまうようでは、だんご製造のノウハウに独自性があるとはとても言えません。このままでは、会社としての競争優位性や魅力が半減してしまうことになります。
この部分をクリアしなければ、売却交渉を進めることは難しい。社長とのヒアリングでは、この点を深く掘り下げていくことになります。
売却先探しは、当初、近隣の同業者や資本力のある企業に交渉するのが自然と思って動いていました。しかし、なかなかうまくいきません。
そんなとき、このだんご屋さんの成長余力を評価した、インターネット通販からアジア各国でのレストランFC展開まで手掛ける複合企業グループが名乗りを上げてくれました。交渉を始めると、意外にも短期間で合意することができました。難しいと思っていた社長の願いは、思いのほかスムーズに叶ったのです。
買い手企業は、いったい何を評価したのでしょうか。
もちろん、社長の誠実な人柄が高く評価されたところはあります。でも、人柄だけで企業を買うことはできません。決め手になったのは、だれでも作れるほどに、仕入れから生産工程まですべてが機能的に確立されていることでした。
そこから、販売量が増加していけば、圧倒的な原価低減が見込まれると判断したのです。 社長とのヒアリングで、私たちはだれでも簡単に作れるようなシステムになった理由を理解しました。それは、過去の失敗に端を発していました。