「サンリオ体験の聖地」の軸をぶらさず
コラボやデジタルで存在感を高めたい

――顧問から館長に就任し、地道に人づくりを進めた結果、平日の来場者数は4倍になるなど「奇跡のV字回復」と評されるまでになりました。

 館長という役職を与えられた身として、これほど嬉しいことはありません。

――そして運営会社である(株)サンリオエンターテイメントの社長に就任し、1カ月。すでに「やりたいこと」は何か、役員と話し合っていると伺いました。山登りに例えるなら、小巻さんのなかでは何合目ぐらいまで登りましたか。

 ようやく3合目まではきたかな、と。ここからさらに、ベースを加速していきたいですね。

「かわいい」「優しくなれる」という
存在感を増すことを重視して投資する

 特に優先度が高いのは、安全対策への投資です。お客様の多くは若い女性やお子さまですから、昨今の痛ましい事件を考えれば他人ごとではありません。安心して楽しめる空間を提供するのは当然のことですし、ピューロランドの価値を高めることにもなります。経費ではなく投資という考えに立って、積極的に対策を講じるつもりです。社会課題の解決につながる、ロールモデルになるような取り組みにしたいですね。

――サンリオ本社からは、具体的なミッションを与えられているのでしょうか。

 特に指示されてはいませんが、サンリオ体験の聖地という軸をぶらさないことが重要です。なぜ1990年、サンリオ30周年のタイミングでピューロランドをつくったのか立ち返って考えると、キャラクターグッズを売るための施設ではなく、「みんななかよく」という理念を体現するための施設をつくったのです。その意味をよく考えたうえで本社との連携を強化しながら、キャラクターの育成、ブランディングやデータ活用で貢献していきたいと考えています。

――予算でも余裕ができましたが、設備の拡張は考えていますか。

 当面は新たなアトラクションの増設や設備など、ハード面を拡張して人を呼びこむよりも、ピューロランドならではの存在感を充実させることが先だと考えています。たとえばコラボした他社のコンテンツや、アーティストさん、声優さんを目当てに来場したお客様には、初めてピューロランドを訪れた方も少なくありません。つまり、残念ながらまだまだ知られていないのが実態です。飽きられないためのハード面の拡張よりは、サービスやコンテンツの充実で、初めて来たお客様にファンになっていただき、その方たちにポジティブな口コミをしていただけるよう、ソフト面に注力する段階だと考えています。

――確かに設備や遊具は整っていても閑古鳥の鳴いている遊園地やテーマパークは全国にありますね。ハードだけでは消費者の心は躍らない時代ですね。

 ハローキティが今年で45周年、来年2020年にはピューロランドが30周年を迎えることもあり、いままでにない切り口のショーやイベントを準備しているところです。「みんななかよく」のメッセージをデジタルとアナログで展開し、で、そのうえに「こうくるか!」という仕掛けをプラスして注目度を上げたいです。いつ来ても「カワイイ!」と叫びたくなるテーマパークになれるよう頑張ります。さらに、ピューロで楽しむことが何かの社会課題の解決につながるような流れを構築できたら、と思っています。

――「人生は想定外の連続」と書籍でも振り返っていました。それでも社長になって描いている将来像、想定しているシナリオがあれば教えてください。

 健康面で問題なければ、少なくとも5年は社長を続けて理想像の7合目までは持って行ってからバトンを引き継げればと今は考えています。これまで、たくさんの想定外がつながって今に至っています。人生は想定外の連続だと思っています。想定外の出来事に対して、そこから逃げ出さずに新たに展開していくことで、どんどん自分も会社も枠を広げて来たと思います。そういう意味では、これからどんな想定外な出来事が用意されているのか、それが何につながっているのか。楽しみですね。

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