将来のことは誰にもわからない。とはいえ、現代の社会において一度大人になってしまったら、自分の将来にある程度責任を持たなければいけないことになっている。その「責任」の1つが年金である。正社員雇用であれば自動的に天引きされる年金。一方で自営業の場合、自分で手続きをして納める必要がある。フリーランスや自営業世帯は、どのように年金に向き合っているのだろう。(取材・文/フリーライター 武藤弘樹)
“老後2000万円”の波紋
フリーランスはどうするか
先日から“老後2000万円”発言が物議を醸している。ご存じの方も多かろうがざっくりいうと、「年金だけに頼って生活すると月5万円の赤字になるので、これを30年続けると約2000万円が必要になってきますね」という報告書を金融庁がまとめたことを受けて、国民の不安やら年金不信やらが高まってブーイングの嵐となり、「それは確かに正しい」という識者や「いたずらに不安になることはありません。この報告書、そもそもあまり当てにならないので」という与党、「100年安心とはなんだったのか。どうするんだ嘘吐き(うそつき)!」と盛り上がる野党などで大変な騒ぎとなっている。
普段あまり老後の貯金について考えたことがなかった人でも、“老後2000万円”の騒動をきっかけに「実際いくらぐらいかかるのか」試算してみた人も多かろう。日本で今後暮らしていく以上まったく他人事ではなく、むしろ当事者であるからしてこれはゆゆしき事態である。
この類のお金の話は、なんとなく憂うつになるので目をつむっておきたい気持ちが働く。筆者も税金や年金の支払い通知が送られてくるとどことなく嫌な気分になるので、その場で確認することなく「あとでチェックする書類」の山にそっと重ねて、そのまま埋もれていくのを待つのが常である。
このような「お金の問題を遠ざけておきたい人」にとっては、“老後2000万円”は「痛いけど一度打っておくといい注射」のようなもので、現実をしかと見つめ直すきっかけとしてはよかったのかもしれない。