殺人や放火の件数は減少傾向にあり、2017年も年間1500件に満たなかった。不幸にして、被害者や被害者家族になってしまった人々にとっては、「少ないから良い」と言える問題ではないけれども、そもそも件数が少ないことには留意が必要になりそうだ。

 全犯罪のうち精神障害者によるものは非常に少なく、全体の1.5%にとどまる。殺人と放火に関しては精神障害者によって行われた比率が高く、殺人で13.4%、放火で18.7%、殺人と放火の合計で15.5%となる。とはいえ、これらの総件数がそもそも少ない上に、精神障害者ではない人々によって行われた件数のほうが圧倒的に多い(全犯罪で98.5%、殺人で86.6%、放火で81.3%、殺人+放火で84.5%)。

 では、「精神障害者は犯罪を発生させやすい」と言えるだろうか。犯罪白書と統計の年次が揃わず恐縮だが、『平成30年版障害者白書』によれば、2016年、精神障害者(392.4万人)と知的障害者(108.2万人)の合計は500.6万人であった(犯罪白書では、「精神障害者等」に知的障害者が含まれるため、合計を計算)。障害者として公認されていない人々も多いため、精神障害と知的障害の重複を考慮しない限り、この人数が最少の見積もりとなる。

 同年の日本の総人口は、1億2693.3万人であった。精神障害者でも知的障害者でもない人は1億2192.7人となる。これらのことから、精神障害者および知的障害者の犯罪者発生率を求めると0.07%、そのいずれでもない人からの犯罪者発生率は0.2%となる。つまり、精神障害者と知的障害者は犯罪者になりにくいのだ。

将来の犯罪につながるかは
誰にも予見できない

 しかしながら、「ヤバい人を識別して隔離すれば、ヤバいことは起こらない」と確実に言えるのなら、話は異なってくる。2002年の池田小学校事件の後、この考え方を基本とした「心身喪失者等医療観察法」(以下、医療観察法)が制定され、2005年に施行開始されて、現在に至っている。

 この法律の目的は、軽いものでも犯罪を発生させた精神障害者を「触法精神障害者」として治療することだ。しかし国会での審議において、将来を予見できるという可能性は否定され、趣旨が再犯予防から医療と福祉へと転換した経緯がある。