経済成長とインフレ期待は不安定なようだ。経済学の教科書に載っているすべての政策を使い果たした中銀の当局者はどうすればいいのだろうか?米連邦準備制度理事会(FRB)と欧州中央銀行(ECB)は近く利下げに踏み切る構えで、日銀は厳しい立場に置かれている。日銀はこれまで、利下げと国債買い入れをほぼ限界まで進めてきた。これは日本にとって問題だ。世界貿易の低迷や中国経済の減速に直面しているだけでなく、他国の中銀が利下げに動くことで、円に上昇圧力がかかってしまうためだ。円高に振れれば、日本企業が海外で稼ぐ利益が目減りし、輸出にも打撃が及ぶ恐れがある。日銀にはまだ、威力は劣るが打てる手は残っている。例えば、低金利をさらに長い期間続ける意向を示すことなどが可能だ。黒田東彦日銀総裁は一段の金利引き下げも可能だと主張するが、国内の銀行はすでに利ざや縮小で悲鳴を上げており、さらなる引き下げはせいぜい微調整にとどまるだろう。日銀の見通しでは、向こう3年に2%の物価目標に届くとは想定しておらず、日銀自体もはや物価目標を達成できるとは確信していないようだ。