加齢と切っても切れない悩みのひとつが“体の痛み”。なかでも、肩関節に炎症を起こして腕が上げにくくなる「肩関節周囲炎」は、多くの中高年が発症することから「四十肩・五十肩」と呼ばれている。しかし、注意すべきは肩の痛みだけではない。肘部分に刺すような痛みを感じる「五十肘」に悩む中高年も少なくないという。いったい「五十肘」とはどのような症状なのだろうか。(清談社 真島加代)
マウス操作で肘に痛みが!
「五十肘」の典型症状とは
デスクワークをしている最中「マウスをつかんだ瞬間に肘に痛みが走った」なんて経験がある人もいるだろう。その症状は、中高年に多く発症する「五十肘」の症状である可能性が高いという。
「五十肘は俗称で、正しくは『上腕骨外側上顆炎』という肘外側に起こる腱付着部の炎症や損傷です。もともとは、テニスでバックハンドを打つ際の動作が影響していることから『テニス肘』とも呼ばれています」
こう話すのは、武蔵小杉整形外科院長の小谷野康彦氏。上腕骨外側上顆炎はテニスやゴルフ愛好家のあいだでは有名な疾患なのだとか。
「テニスのバックハンドを打つ際、ラケットを持っている腕を手首ごと手の甲側に持ち上げる動きをします。この動作を繰り返すと『手関節伸筋』という筋肉の腱が骨から始まる肘外側部分(上腕骨外側上顆)に何度も牽引負荷がかかり、同部位が損傷して痛みを感じるようになるのです」
テニス肘を患うと、手の甲を上にした状態で物をつかんだり、タオルを絞る動作などで手首や指に力を入れたりしたときに、肘の外側に痛みを感じるという。パソコンのマウス操作にも支障が出る。しかも、テニス経験の有無に関係なく、中年期以降は上腕骨外側上顆炎を発症しやすいと小谷野氏は指摘する。
「上腕骨外側上顆炎の主な発症原因は二つ。一つは、加齢によって筋肉のしなやかさが低下することです。二つ目は、手関節伸筋の腱付着部の劣化(退行変性)が原因とされています。使いすぎもありますが、加齢の影響が大きく、中高年層の発症が圧倒的に多いのが特徴ですね」