「広告よりも口コミのほうが信用できる」。若い世代を中心に、そんな風潮が強まっている。多くの口コミサイトやアプリが生まれていることも、この流れと無関係ではないだろう。こうした「生活者は口コミに大きな影響を受ける」という空気を利用したのが、インフルエンサーマーケティングだ。影響力のあるインフルエンサーに宣伝してもらえば売り上げや認知度が上がる。そう信じて依頼したところ、思わぬ落とし穴にはまるという場合も。「インフルエンサーで失敗した」という企業の広報・PR担当者らに話を聞いた。(取材・文/むらたえりか)※本文中の人物はすべて仮名です。
フォロワーかぶりで効果薄、ステマ指摘も
インフルエンサーの落とし穴
インフルエンサーマーケティングのメリットは既存の広告手法と比べて、見た人の購買意欲を高められることだ。例えばテレビCMや看板などの場合、「こんな商品があるんだ」「新しいサービスができたんだ」という認知のフェーズで生活者の意識が止まってしまう。
しかし、すでに多くのファンを持つインフルエンサーが発信すれば、「この人が使っているなら、自分も買ってみようかな」というファン心理から、購買検討のフェーズまで意識を引き上げることができる。
インフルエンサーの階層は大きく3つにわかれている。日本国内の場合、「メガインフルエンサー」は、スターやセレブなどのフォロワー数百万~1000万人の人たち。「マクロインフルエンサー」は、タレントやブロガー、ジャーナリストなどのさまざまな職業で、フォロワーの数は数十万人程度。そして、「マイクロインフルエンサー」にはインスタグラマーやYouTuber、読者モデルなどがいて、フォロワー数千人程度からなることができる。
影響力の強いメガインフルエンサーに宣伝を頼めれば万々歳だが、それには莫大な費用がかかってしまう。潤沢な資金を持っていないとなると、広告代理店などから「まずはマイクロインフルエンサーから……」とミニマムスタートをすすめられることがある。
美容商材の宣伝を、2000~3000人程度のフォロワーを抱えるインスタグラマー10人ほどに頼んだことがあるECサイト制作会社の林さん(30代男性)は、「いま考えると、もっとよく考えれば良かった」と悔いた。
「代理店の話では、『インフルエンサー1人につき2000人以上のフォロワーがいるので、10人に投稿をさせれば単純計算でも2万人の目に触れさせることができる』ということだったんです。それを信頼してしまったのが間違いでした」(林さん)
宣伝の効果を見ると、とても2万人の目に触れたとは思えなかった。これなら、アフィリエイターに記事を書いてもらったり、いつもどおりにWeb広告を打ったりしたほうが良かったと、上司に厳しく詰められた。