外気圧の低下による
むくみが関係している?

 このデータだけでは、9~10月に喘息が悪化する原因を確定するのは困難だが、台風の通過時期と喘息に因果関係がある可能性がある。私たちの体は外気圧の低下により、わずかにむくむ。特に台風のような強い低気圧により外気圧の低下が生じると、気道粘膜や粘膜下組織がむくみを来たし、気道を狭窄(きょうさく)させて喘息症状を発症する可能性はあり得るかもしれない。

 一方で、台風により何らかのアレルゲン(アレルギーの原因となる抗原)がまき散らされ、これが喘息の増悪要因になる可能性も指摘されている。これらの仮説の証明には、気象データとの相関関係の有無や、大気浮遊物質のサンプリングなど検証作業が必要となる。

 いずれにせよ、喘息が悪化する月をピンポイントで突き止められたのだから、これは予防策に生かすことができるだろう。

 喘息発作を繰り返す人は吸入薬を中心とした発作の予防薬の継続使用が必要だ。しかし、喘息の発作がおさまると予防薬の使用をやめてしまう人が少なくない。7~8月の受診時に医師は9~10月に喘息が悪化する可能性を患者さんに伝えたり、喘息治療の管理徹底を促したりすれば、重症化を避けることできるかもしれない。重症化を防げば、入院回避につなげ得る。

 自治体や医療機関は7~8月に市民講座などで喘息に関するセミナーを開催し、9~10月に喘息が悪化しやすいことや、その対処法を伝えてもいいだろう。入院件数が減れば社会的に医療費の抑制になる。また、医療機関の経営においては、喘息の入院患者数の変動に応じて薬剤在庫を調整することで、期限切れによる廃棄薬剤を減らしてコスト削減につなげることもできよう。

かとう・かいいちろう/1977年栃木県生まれ。2004年旧福井医科大学卒。自治医科大学附属病院、済生会宇都宮病院、千葉メディカルセンターを経て、19年医療情報サービス会社のメディカル・データ・ビジョン入社。患者の医療データから見いだされた知見は患者、医療機関、製薬企業などの産業、国、自治体それぞれに恩恵があるとし、社会に還元される必要があると考える。総合内科医。