仮想通貨リブラに僕が「ほれた」理由
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米フェイスブックが発表した仮想通貨「リブラ」の構想。世界各国から批判が相次ぐが、日本企業として真っ先に構想への参加意向を示したのがマネックスグループ。経営トップ自らが、ほぼ即決の勢いでリブラ運営団体に接触した。インターネット証券の勃興を見いだした経営トップは、リブラにも未来の巨大市場を見いだしたのか? リブラを巡る真意を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 杉本りうこ)

――フェイスブックがリブラ構想を発表したのは今年6月18日。そこから1カ月足らずで、日本企業として初のリブラ協会(リブラの運営団体、非営利組織)への加盟申請を明らかにしました。その経緯を教えてください。

 フェイスブックがリブラ構想を発表したその日に、ニュースを読んで「面白いな」と思い、動きました。リブラ協会のメンバーに友達がいたので、「リブラって面白そうだね。僕も入ることを検討しようかな?」とメールを出しました。発表した日のうちにです。するとすぐに、「確かにアジアからは1社も参加していない。ハッピー・トゥ・コネクト!」と返事がきて、協会の責任者につないでもらえた。そういう運びです。

――発表後の反応はどうですか。日本の金融機関や事業会社で、「うちも関心があるんだけれど、ちょっと教えて」というところはありましたか。

 ないですね。海外の政府関係者などからはコンタクトがあったのですが。リブラ構想そのものがまだよく分からないところがあるし、各国の政府や中央銀行がどう動くかも分からない。もちろん日本銀行や金融庁、財務省がどうするかも、何も分からない。だからみんなが動かないのは、当然なところもあります。

 だけど同時に、世界中の当局者が今まさにリブラについてかんかんがくがくで議論しているという事実もあります。これから各国の政府がリブラや他のステーブルコイン(ドルなどとの交換レートが一定に保たれた仮想通貨)をどう考えるのか、規制をするのかといったことは、議論の現場にいないとちゃんと見えてこない。じゃあそこに参加するしかないでしょう。リブラが出てきて、それでどういうサービスをするのか決めてから申請しよう、なんていうのじゃ駄目。僕は性格的にベンチャー気質なので。

――リブラ協会は「お金はもっと、SMS(ショートメッセージサービス)並みの手軽さと安さで送れるようになるべき。住んでいる場所や職業に左右されず使えるようになるべき」と主張しています。インターネットの世界から見ると、既存の通貨は世界中でうまくつながっていないと見えるようです。

 お金の偏りって、自然資源が豊かな国ほど起こりやすい。自然資源があったら本当は国民は豊かになるはずなのに、汚職や寡占で一部の権力者がお金をがめちゃう。鉱山で子どもを働かせるような人権じゅうりんも起きやすい。日本は自然資源がないから、極端な貧富の差が起こらないんです。こういう状況で発展途上国にいくら経済的支援をしても、権力者に中抜きされるだけです。

 じゃあどうやって本当にお金が必要な人に直接お金を渡すかというと、ブロックチェーン技術を使うのがいいと思います。ブロックチェーンは、「○○さんだけが使えます」「ミルクしか買えません」というふうにプログラムすることが可能だから。社会問題を解決する上で、ブロックチェーン技術はすごく有効。そしてリブラはそれを実現する第一歩になり得る。

「使わないとなくなるお金」塩じいの案は秀逸だった
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――ブロックチェーンには、お金を巡る矛盾を解決する可能性がある。

 日本も無縁じゃありません。今は優秀な人がみんな東京に働きに来ちゃうような、人や物の一方的な移動があるでしょう。それは東京と地方とでは地域の競争力が違うのに、同じ通貨を使っているからです。都道府県を国だと考えたら、それぞれの国に通貨と交換レートがあっていい。そして東京円と地方円だったら、地方の方が安くなるから、通貨が安いという競争力を持てます。こう考えると、日本や世界を「でこぼこ」させている不均衡が、リブラのようなブロックチェーンで解決できるかもしれない。

 僕ね、日銀総裁に聞きたいことがあるんですよ。何かというと、「マイナス金利の時代に、いつまでも紙幣を発行するばかりでいいんですか?」ということ。紙幣のような現金はゼロ金利です。かつてのように金利が高いときは、金利のない紙幣を発行すればシニョレッジ(中央銀行の通貨発行益)が得られたわけです。でも今はマイナス金利じゃないですか。そうしたら紙幣の方が、コストとして高くなる。「逆シニョレッジ」になっているんです。日本だけではなくて、世界の債券発行残高のうち、4分の1がマイナス金利になっているそうです。

 これが仮想通貨技術を使った貨幣なら、時間とともに価値が減っていくマイナス金利の状態にプログラムできます。そうするとマイナス金利の本来の目的である、「お金をもっと消費や投資に回そう」ということをみんな考えますよね。こういう可能性を踏まえれば、日銀もそろそろ円のブロックチェーン化を真剣に考えていい。メディアの皆さんは、どうしてこういうことを質問しないのかなあ。

――松本さん自身が聞きに行ったらどうですか。

 いやあ僕は忙しいからさ(笑)。でも塩川さん(正十郎、元財務大臣)が生きていたら、話しに行ったと思う。塩川さんは財務大臣だった当時、「新しい紙幣には期限を付けて発行しよう」というアイデアを出したんです。要するに、「使わないとなくなっちゃうよ」ということです。すごく頭がいい。そもそも、紙幣を管理するために日銀は大変なコストを負担しています。外国に比べると、日本はお金がきれいじゃないですか。それは日銀が汚いお金を回収して、きれいなのと入れ替えているから。めちゃくちゃコストが高いお金なんです。これもデジタルでやれば、メンテナンスフリーですよ。