今年の10月から、いよいよ消費税が10%に引き上げられます。これまでの消費税アップと大きく異なるのは、一部の商品に軽減税率が適用される点です。具体的には、「酒類や外食を除く飲食料品」と「定期購読契約を締結した週2回以上発行される新聞」が消費税8%に据え置かれます。ここではその是非はいったん横に置き、ビジネス的な視点で、軽減税率の対象外となった外食産業に今回の増税がもたらす影響を考えてみましょう。(グロービス経営大学院教員 嶋田 毅)
軽減税率は日本だけのもの?
仏ではフォアグラ、トリュフにも適用
さて、今回の消費増税で導入される軽減税率は批判も多い仕組みですが、世界を見渡すと割と一般的に導入されています。例えば、ヨーロッパなどではもっと軽減税率の差が極端かつ多様で、それがさまざまな政治的駆け引きを招き、消費者の行動にも影響をもたらしてきました。
例えば、フランスでは輸入品であるキャビアは標準税率の一方、国内産をメインとするフォアグラとトリュフには軽減税率が適用されています。これはもちろん国内の生産者の声を反映したものです。その結果、世界三大珍味の中でキャビアのみが競争上、不利となっています。
具体的には、両者の間に14.5ポイントの付加価値税(日本の消費税に相当するもの)の差がありますから、日本円にして1万円相当を購入すると、1450円分の差が出てしまうのです。これは人々の消費行動を変えるには十分な差といえるでしょう。
今回、日本で導入される軽減税率と新たな消費税率の差はたかだか2ポイントですから、そこまで極端な消費行動の差にはつながらない可能性もあります。
仮に年間の外食費がおよそ30万円の家庭があったとすると、今回の増税によって上がる金額は年間で6000円です。ただし、欧米ほど極端な差でないにせよ、心理的な影響は否定できません。また、将来的にはさらに消費税率と軽減税率の差が広がる可能性もあります。
そこで今回は、2ポイントという数字に過度にこだわらず、軽減税率の導入や税率の差が広がることによる影響について、外食産業を題材に考察してみます。