台風15号が残した深刻な爪痕
生活保護は救いになるのか
9月9日、台風15号が関東を襲った。この台風は、同日午前5時頃千葉市に上陸、9時頃には太平洋へ抜けた。しかし数時間のうちに、主に千葉県と伊豆諸島に甚大な被害をもたらし、約10日後の現在も被災地を苦しめ続けている。被害の全容は、いまだ明らかになっていない。本記事を執筆している9月19日現在は、激甚災害指定となる可能性が関心を集めている。
状況を深刻にしているのは、台風そのものの被害もさることながら、長期にわたる停電だ。空調が使用できないことは、既に熱中症による死者の発生につながっている。また台風による倒木など、これまで関東では想定されてこなかった被害が、電力供給の復旧を困難にしている。
もしも台風15号の進路がもう少し関東の内陸に入り込んでいたら、東京都心部が大きな被害を受けていた可能性もある。通勤圏の「1都3県(千葉県、埼玉県、神奈川県)」や交通網が、今回の房総半島並みの被害を受けると、復旧はどれほど困難になるだろうか。もちろん、どの地域でも「明日は我が身」だ。
とはいえ、日本には生活保護がある。どのような被害を受けても、命さえあれば「最後のセーフティネット」と呼ばれる生活保護が救いになる。もともと日本には、根強い生活保護差別があるけれども、天災による被災は差別のトーンを少しだけ弱めるかもしれない。
しかし、「生活保護の条件は、差別されていただくことです」と言わんばかりの制度改革が、特に2013年以後、とめどなく進行するばかりだ。生活保護のもとでの大学等への在学は、未だに認められていない。職業選択の権利も、生活保護を必要としていない人々と同等に認められているわけではない。さらに病気や負傷で医療を必要とすれば、「生活保護なら後発医薬品が原則」という制約が待っている。
生活保護という制度が広く深く知られるようになれば、人による差別は少し減るかもしれない。しかし、制度そのものが十分に差別的だ。そういう「最後のセーフティネット」で良いのかどうかは疑問だが、存在することは、一応は安心材料だ。