天を指すプラトン、
地を指すアリストテレス
だからラファエッロ(1483−1520)がルネサンス期に描いた『アテナイの学堂』というヴァチカンにある有名な絵で、プラトンはレオナルド・ダ・ヴィンチ(1452−1519)をモデルにしているらしいのですが、プラトンの指は天を指している。
一方、アリストテレスはミケランジェロをモデルにしたらしいのですが、その指は地を指している。
でも、みなさん、「天と地」といわれたらどちらが好きですか?
みんな天のほうが、なんとなくカッコいいように思うでしょう。
そこが人間の面白いところで、人間は壮大な理論、観察だけでは得られない、ある程度飛び抜けたものに惹かれるところがあるのだと思います。
人間はそんなに賢い頭を持っているわけではないので、カッコいいものに惹かれる。
だからイデアとかよくわからないけれど、なんかカッコいいなぁ。ヘーゲルの弁証法も、なぜ正と反が一緒になるのか説明されていないけれど、壮大な体系だなぁと。
そういうものに人が惹かれるのが、また面白いところです。
宗教はもっとそうです。まったく理屈がないけれど、あの教義になんか惹かれる。イエス様が全部救ってくださる、そうかわかった、という感じになりやすい。
なぜこんなに苦しいのか。原罪を背負っているからだ。原罪は証明できないけれど、一旦、信じてしまえばものすごく腹落ちできる。
哲学の壮大な体系のさらに飛び抜けたところに宗教があるのだと思います。
だから、実証できないものにこそ、人は惹かれるところがあるのかもしれない。
そこが人間の面白いところだという気がします。
でも、日々の仕事を観念論や宗教でやっていたら、めちゃくちゃになりますから、日々の日常生活や仕事や政治は、アリストテレスの方向、つまりきちんと観察して、数字・ファクト・ロジックで積み重ねていかないと、ろくな仕事はできない。
一方、人間は感情の動物であり、いつまで経ってもないものねだり、青い鳥を求めるので、そこに人間は哲学や宗教という壮大な体系を築いてきたのかなと思ったりもします。
このあと、みなさんと質疑応答をしたいと思います。
ご清聴ありがとうございました。
(講演会は一旦おわり)