北海道の道南、新千歳空港から南に向かって約30分のところに位置する苫小牧市。2018年9月6日に、最大震度7を記録した北海道胆振東部地震が襲った地域にほど近く、人口約17万人を擁する道内4番目の都市だ。その苫小牧市に、損害保険の収入保険料で約11億円、生命保険の保有契約ANP(年換算保険料)約10億円を稼ぎ出す、総合保険代理店のケーエスがある。
そのケーエスを率いるのが、代表取締役の坂本将一氏。三井住友海上火災保険の全国代理店会会長を務める人物だ。保険業界に飛び込んでから30年弱、会社を設立してから26年の間に、大小合わせて15社ほどの代理店のM&Aを手掛け、成功させてきた坂本氏。損保代理店の統廃合が業界の大きな課題となる中、どうやってM&Aを成功させてきたのだろうか。
【保険代理店ケーエスの概要】
■設立:1993年1月
■代表者:坂本将一
■本社:北海道苫小牧市、支店:道南地区に4店(登別室蘭、千歳、厚真、日高)
■スタッフ数:37人
■顧客数:個人:1万0127人、法人:741社
■損保収保:約11億円、生保保有ANP:約10億円
坂本氏が、右も左も分からぬ保険業界に飛び込んだのは1988年、21歳のときのことだった。地元の北海道を出て東京の事務機器販売会社に勤めていた坂本氏だったが、苫小牧に戻って義父の保険代理店に入社することを決めたのだ。
年収は半減、将来性への不安から反対の声も少なくなかったが、「すべてはいずれ社長になるための勉強だ」と考えた坂本氏は、保険業界に飛び込んだ。当時、新規の年間保険料が1000万円あれば一流とされる中、持ち前の営業力で3年目にはその数字を達成する。そして、入社から4年目を迎えた92年8月に長女が誕生、公私ともに順風満帆のときを迎えていた。
好事魔多し。この年の年末に大きな転機が訪れる。義父の代理店が倒産したのだ――。
会社が危ない状況にあることは、時おり銀行からかかってくる電話の取り次ぎなどで薄々感じていたという。そのため、倒産を冷静に受け止めることができた。その後の処理に追われる中で、会社がどうやって潰れていくのか、どうすれば資金が回らなくなるかなど“生きた知識”を学ぶことになる。
そして、93年1月、既存顧客を守るために保険業を続けることを決心し、ケーエス保険サービス(現ケーエス)を設立する。当時の坂本氏は25歳の若さ。財務諸表も読めなければ、マーケティングノウハウや教育システムも何もない中での船出だった。