同院が自動車運転外来を開設したきっかけは、「認知症の疑いがある高齢ドライバーを診てくれないか。対応してくれる医療機関が見つからず、困っている」と警察から相談されたことだったという。

 認知症は診断が難しいし、現状では、どのような状態なら、正常な自動車運転が可能かどうかの判断基準も決まっていない。しかももし、医療機関が「認知症ではない」と診断した後に患者が事故を起こした場合、責任問題になりかねないという懸念が医師や病院側にはある。

 また、都市部はともかくとして地方では、車は生きていくために不可欠な存在なので、医師から免許を返納するよう告げられても患者は簡単には納得しない。買い物や通勤等、生きていく上で必要な移動の手段が保証されていない状況で運転を禁じられることは、オーバーでなく死活問題なのだ。

 単純に、医学的見地で判断するには、責任が重すぎる。対応してくれる医療機関がなかなかみつからなかったのは、そんな事情があるからだろう。

 同院では、3テスラの超伝導MRIによる精細な脳画像診断を基に、最新のドライブシミュレータを用いて安全運転に必要な運動・認知機能評価を行い、自動車運転の継続が可能かを専門的かつ総合的に判断。継続すべきではない人に対しては、免許の返納を勧めるほか、リハビリテーション治療による安全運転能力の向上を目指す自動車運転外来も開設している。

 結果、リハビリの対象となるのは、認知症予備軍といわれる軽度認知障害(MCI)のような「グレーゾーン」だった人たちで、希望すれば週2回、1ヵ月間にわたって計8回の訓練を経た後、再検査を受け、改めて運転継続が可能かどうかの診断を受ける。

 MCIは、認知機能の1つに問題はあるものの、日常生活には支障がない状態で、リハビリ介入すれば運転寿命の延伸可能という意見がある。

 むろん、リハビリは運転できることを保証するものではない。リハビリすることで、本人も、自分の状態を客観的に把握し、かつ、やれることはやったと納得できれば、素直に免許を返納する気持ちになれるかもしれない。免許を無理やり取り上げる感じが軽減されることは重要だ。