消費税率の8%から10%への引き上げが10月施行された。振り返ると、日本の消費税は経済・政治両面で暗い記憶を引きずっている。
消費税の経緯を振り返り、併せて「均衡財政へのこだわりは根拠なき神話」と説くMMT(現代貨幣理論)派の主張の信憑(しんぴょう)性を考えてみよう。
消費税と内閣退陣のジンクス
消費税の導入は竹下登内閣の下で1989年4月に実施された(税率3%)。ところが、竹下首相は「リクルート事件」で89年6月に退陣となり、消費税導入とリクルート事件で人気が落ちた自民党は参議院選挙(89年7月)で与野党の議席が逆転する敗北を喫した。
この時、経済面では日経平均株価指数が1989年12月末を高値に翌90年初から急落となり、不動産市況も91年をピークに暴落、90年代前半はバブル崩壊不況となった。政権の人気急落とバブル崩壊不況が消費税導入に絡んで記憶されることになってしまった。
次は1997年4月の橋本龍太郎内閣による消費税率の5%への引き上げだ。97年7月にタイの通貨バーツ相場の急落で始まったアジア通貨危機の波及と銀行の不良債権問題で、97~98年は金融危機型の不況となり、橋本内閣は98年7月の参議院選挙で敗れて退陣した。
この時も不況の原因として消費税率の引き上げは、実証分析では極めて限定的であることが指摘されているが、金融危機型不況と内閣退陣に関連して記憶されることになった。