仏教がリードする二一世紀のシンプルライフ
「諸行無常」「諸法無我」でわかる通り、仏教ではすべてに執着しないように教えていました。たとえば、目の前に一〇〇万円あったとしても、それは幻と同じです。なぜなら、明日にはないかもしれないし、火をつけたら燃えて灰になってしまう。一〇〇年後には、確実になくなります。
また、関係性のなかで生きている私たちにとって、その一〇〇万円は自分でつくり出したものではありません。紙に印刷した人の存在があり、お金の価値を共通のものとして理解する人々がいてこそのお金です。
その理解するという関係がなければ、お金はただの紙なのですから、究極的には何もないのと同じです。
すべては変わっていくし、すべては絶対ではないし、すべては関係性のバランスのなかで一瞬存在している幻のようなもの。「だからすべてに執着してはいけませんよ」というのが、仏教の教えです。悟りとは、現実生活にある欲望を捨てていくことでもあります。
仏教は、お金儲けについて禁じてはいませんが、「執着しない」という教えからすると、積極的にお金儲けを推奨しているわけではありません。その意味で、仏教はビジネスパーソンには縁遠そうに思えます。
しかし、「もっとたくさんほしい」という理屈で生まれた資本主義の社会が成功した結果、飽和状態になって「何もいらない、何も持たない」というシンプルな生き方への関心が高まりました。
シンプルを追求した無印良品が世界的なブランドとして成功したり、茶道という文化があったり、日本は世界において「ミニマリズムの最先端の国」というイメージを持たれています。釈尊の教えからシンプルライフについて語るというのも、ビジネスパーソンにとっての「教養ある雑談のネタ」になると言えるでしょう。