アメリカ・ヨーロッパ・中東・インドなど世界で活躍するビジネスパーソンには、現地の人々と正しくコミュニケーションするための「宗教の知識」が必要だ。しかし、日本人ビジネスパーソンが十分な宗教の知識を持っているとは言えず、自分では知らないうちに失敗を重ねていることも多いという。本連載では、世界94カ国で学んだ元外交官・山中俊之氏による著書、『ビジネスエリートの必須教養 世界5大宗教入門』(ダイヤモンド社)の内容から、ビジネスパーソンが世界で戦うために欠かせない宗教の知識をお伝えしていく。

Photo: Adobe Stock

大航海時代で世界に広がり近代を迎える

 宗教改革によりプロテスタントの勢いが増すにつれて、カトリック側の危機感も高まりました。カトリック陣営には、当時、地中海世界で大きな力を持ったオスマン帝国と同盟を結ぼうとする意見すらありました。

 オスマン帝国はイスラム教の帝国ですから完全に異教徒。それでも同盟したいというくらい、追い詰められていたのです。

 一五世紀後半以降始まったスペイン・ポルトガルによる世界への大航海は、一六世紀の宗教改革によるカトリックの危機感に結びつき、世界各地へのキリスト教の伝播につながりました。中南米にカトリック教徒が多いのは、この大航海時代にスペインとポルトガルがやってきて植民地化したためです。

 私は二〇一三年のフランシスコ教皇就任直後に教皇の出身国アルゼンチンを訪問したのですが、街のいたるところにフランシスコ教皇の写真が飾られており、アルゼンチンの人々が心から教皇就任を祝っていることを感じました。

 ヨーロッパでは一六世紀から一七世紀にかけて多くの宗教戦争が起きました。一七世紀の三十年戦争はそのなかでも最大級のものでした。

 宗教改革の影響で中南米に加えてアジアにも多くの宣教師が送られました。日本にもフランシスコ・ザビエルがやってきたことはよく知られています。

 時代は大きく下りますが、一九世紀にアフリカがヨーロッパの植民地になるとキリスト教はアフリカでも信者を増やします。アフリカ大陸には、古来エチオピア正教会、エジプトのコプト教会など東方教会系のキリスト教がありましたが、その他の地域にも本格的に広がったのです。現在アフリカ大陸の南半分はキリスト教徒が多い地域になっています。

 このように大航海時代と宗教改革を経ることで、ヨーロッパと地中海周辺の国々の宗教であったキリスト教が全世界的に広がるのです。

 大航海時代とほぼ同時期のルネサンス時代には、神優位の時代から人間中心の時代への変化が起きました。プロテスタントの勢力拡大もあり、ローマ教皇の権威は落ちていきました。時代は合理主義・科学主義をベースとする近代に入っていったのです。