損益分岐点はQだけじゃなく、
P、V、Fを合わせて4つ存在する

 「営業部員に『値下げをしないで、販売数量をあと2個増やして!』とお願いする必要があったんですね。でも、同じ300円の売上なのに利益がこんなに違うなんて……」
 早苗は、2つのMQ会計表を交互に何度も見返した。

 「売上は売価(P)×数量(Q)だ。『売上を増やせ!』というあいまいな指示ではダメで、何円(P)で、何個(Q)売るかを決める必要があるんだ。そうしないと今回のシミュレーションのように、売上が増えたのに利益が減ってしまう『増収減益』ということも十分に起こりえる。だから従来の損益分岐点分析だけでは不十分。そこで……」

 「MQ会計の出番なんですね!」
 早苗は、川上の言葉を先回りして言った。

相馬裕晃(そうま・ひろあき)
監査法人アヴァンティア パートナー、公認会計士

1979年千葉県船橋市生まれ。
2004年に公認会計士試験合格後、㈱東京リーガルマインド(LEC)、太陽ASG 監査法人(現太陽有限責任監査法人)を経て、2008年に監査法人アヴァンティア設立時に入所。2016年にパートナーに就任し、現在に至る。
会計監査に加えて、経営体験型のセミナー(マネジメントゲーム、TOC)やファシリテーション型コンサルティングなど、会計+αのユニークなサービスを企画・立案し、顧客企業の経営改善やイノベーション支援に携わっている。年商500億円の製造業の営業キャッシュ・フローを1年間で50億円改善させるなど、社員のやる気を引き出して、成果(儲け)を出すことを得意としている。
著書に『事業性評価実践講座ーー銀行員のためのMQ会計×TOC』(中央経済社)がある。MQ会計を日本中に広めてビジネスの共通言語にする「会計維新」を使命として、公認会計士の仲間と「会援隊」を立ち上げ活動中。