ところが、二酸化チタンと金属リチウムの組み合わせでは安定した動作の2次電池にはならず、金属リチウムを使う電池は使い捨ての1次電池として実用化がスタートした。

 80年にオックスフォード大学のジョン・グッドイナフ氏らがコバルト酸リチウムなど遷移金属酸化物を正極材に使用する方式を提案する。その翌年、旭化成工業の吉野彰氏らは、グッドイナフ氏らが立証したコバルト酸リチウムの正極には炭素材料を用いた負極を組み合わせる方式が適していることを突き止めた。

 グッドイナフ氏と吉野氏のアイデアが現在のLiBの基本概念である。

 さらにその2年後、グッドイナフ氏は安価なマンガン酸リチウムも正極材料として使うことができると証明した。吉野氏らは有機溶媒とセパレーターを使って正極と負極の間のイオンのやりとりを安定して行う技術も確立し、LiB実用化に大きく弾みがついた。

ほぼすべてのEVが
エネルギー源としてLiBを搭載

 こうした技術開発の基盤があって91年、日本のソニー・エナジー・テックは世界初のLiBを商品化し、93年には旭化成工業と東芝の合弁会社のエィ・ティー・バッテリーもLiB量産を開始する。

 なお、グッドイナフ氏とともにコバルト酸リチウムなど一連の極材物質の発見を研究したのは、当時オックスフォード大学無機化学研究所に留学していた水島公一氏(帰国して東芝に入社)であり、現在は生活の中に浸透しているLiBの実用化研究には日本の研究者が深く関わっていたのである。

 ノーベル賞発表の4ヵ月前、EU(欧州連合)の機関である欧州特許庁は2019年欧州発明家賞を発表、非欧州部門の賞を吉野氏に授与している。過去、同賞はカーボンナノチューブを開発した飯島澄男氏らやQRコードを開発した原昌宏氏らが受賞している。

 量産EVが各社から発売されるようになった現在、ほぼすべてのEVがエネルギー源としてLiBを搭載している。この事実が、吉野氏らの研究がもたらした成果の偉大性を物語るものといえる。

(報告/牧野茂雄、まとめ/CAR and DRIVER編集部)

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