萩生田光一文部科学相
衆院文部科学委員会で「身の丈」発言について謝罪する文部科学相の萩生田光一。9月の内閣改造以降、閣僚によるスキャンダル、失言が続発している Photo:JIJI

 10月26日土曜日の夕方、永田町に静かな衝撃が走った。元自民党の参議院幹事長吉田博美(享年70歳)の訃報だった。

 “参院のドン”と呼ばれた元官房長官の青木幹雄を師と仰ぎ、抜群の度胸と面倒見の良さでいつしか参院の“陰の司令塔”と呼ばれるようになった。青木の側近中の側近でありながら山口県出身ということもあって、首相の安倍晋三の信頼が厚く、長期政権を実現させた功労者の一人だった。

 しかし、脳腫瘍が見つかり今年の参院選挙を機に政界を引退した。安倍は吉田の労に報いるため総裁特別補佐の肩書を与えた。青木も東京・平河町の事務所に連名で吉田博美事務所の看板を掲げさせ秘書も引き取った。

「1年でも2年でものんびり療養をしてボチボチやればいい」

 そう言って励ましてきた青木は「こんなに早く逝ってしまうとは思わなかった」と、ショックを隠さない。週が明けた28日には数十人の国会議員が青木の元を訪れた。青木が政界を引退して9年。今なお参院自民党の国会運営は「青木頼み」から脱し切れていない現実を浮き彫りにした。

 吉田の後を引き継いで参院幹事長に就任したのが元経済産業相の世耕弘成。就任後に青木を訪ねて協力を要請している。自民党の最高幹部の一人も引退後の吉田の役割に期待を込めていた。

「吉田さんを介して青木さんの指南を受けることができれば参院はうまくいく」

 参院選後に自民党参院会長に就任したばかりの関口昌一も9月中旬に体調不良で入院、退院はしたものの完全復帰にはなお時間が必要だ。それだけに吉田を欠いた意味は大きい。安倍が執念を燃やす憲法改正に向けた国会運営に暗雲が垂れ込める。世耕が吉田亡き後、参院の国会運営で結果を出せるかどうか真価が問われる場面だ。

スキャンダル・失言で
「辞任」「謝罪」「釈明」

「参院の危機」とは別にお膝元の閣内で想定外の事態が表面化した。毎日のように新聞に情けない見出しが躍った。

「辞任」「謝罪」「釈明」──。

 安倍が内閣改造・自民党役員人事を断行したのが9月11日。まだ2カ月もたっていないにもかかわらず、スキャンダル、失言の続発だ。しかも今後問題発言をする閣僚が出ない保証はない。むしろ“地雷”が埋まっているとみた方がいいかもしれない。元五輪担当相の櫻田義孝は失言や珍答弁で辞任に追い込まれた。自民党幹部の不安は尽きない。

「櫻田級がまだ数人いる」

 あえて名前は秘すが、“失言予備軍”の何人かの顔と名前が頭に浮かぶ。安倍は人事権を行使するに当たってどれだけ吟味、検討、熟慮したのか。まさしく安倍の任命責任が問われている。

 今回の人事をもう一度おさらいしてみると、登用された新入閣13人の顔触れは三つのカテゴリーに分類される。「安倍のお友達」「派閥推薦のベテラン」、そして官房長官菅義偉の影響力を背景に入閣した「菅銘柄」だ。わずか1カ月半余で重要閣僚である経済産業相の座を去った菅原一秀は、その「菅銘柄」の筆頭格だった。