2019年2月の自民党大会今年2月に行われた自民党大会。来年は3月8日の開催が決まったが、それは首相である安倍晋三の自民党総裁としての4選がほぼ消えたことを意味するという Photo:JIJI

「ニュースの核心はベタ記事にあり」。しばしば短い記事の陰に大きなニュースが隠れている。11月6日付の朝刊各紙の政治面に掲載された同じ内容のベタ記事もそれに当たる。

「自民党大会3月8日に」

 記事は来年の自民党大会が3月8日に決まったことを報じただけだったが、それ以上に深い意味がある。首相である安倍晋三の自民党総裁としての4選がほぼ消えたことを意味するからだ。現行の総裁任期は党則で「1期3年、連続3期まで」と決まっている。4選を可能にするには党則を変えなければならない。

 安倍が3選を果たしたのは2018年9月の総裁選。それまでは党総裁任期を「連続2期6年まで」と制限しており、「3期9年まで」に改正するための党則変更が必要だった。それを実現したのが17年3月5日の自民党大会。総裁選実施の約1年半前に当たる。当然のことだが、いきなり党大会に総裁任期を延長するための議案が提出されたわけではない。

 議論が始まったのは前年の9月。「党・政治制度改革実行本部」を舞台に「3選問題」が俎上に載せられた。無派閥を含め自民党内の全派閥がメンバーを送り込み、本部長代理の茂木敏充(現外相)が意見を集約した。つまり任期延長による総裁選の実施までに2年間を費やしたことになる。この3選論の口火を切ったのが幹事長に就任した直後の二階俊博だった。

「引き続き総裁を務めてほしいとの声が国民にある」

自民党大会の日程決定で
ほぼ固まった安倍4選なし

 もちろん党内には元幹事長の石破茂ら反対の意見も根強く存在したが「安倍1強」の前では多勢に無勢。党則変更後に行われた昨年の総裁選は安倍、石破の一騎打ちとなり、安倍は3選を決めた。その結果、今月20日には首相在任期間で歴代最長の桂太郎を抜き第1位になることが確実になった。

 そして4選説がなおくすぶってきた。今回も最初に口にしたのは二階だった。9月11日に幹事長再任の記者会見で明快に言い切った。

「もし(安倍)総裁が決意したら、国民の意向に沿う形で党を挙げて支援したい」

 しかし、今もって二階が安倍4選に向けて積極的に動いた形跡はなく、党内の手続きが始まった話も聞こえてこない。それ以上に安倍および安倍周辺からも安倍の「やる気」が伝わってこないのだ。

 安倍に近い自民党税制調査会長の甘利明は10月18日、静岡市内の講演で安倍の気持ちを語った。

「3期を超えて(総裁を)務めるつもりは全くないと思う」

 今回の党大会の日程決定はこうした流れの中で「安倍4選なし」をほぼ確定させる意味を持つ。何よりも安倍3選を決めた際の安倍と二階の関係が全く異なっている。内閣改造・党役員人事でも安倍は幹事長に政調会長の岸田文雄の起用にこだわったようだ。裏側から見れば、それは「二階外し」の試みでもある。結果として二階の続投で収まった形になったが、両者の間に隙間風が吹く。新体制になってから新聞の首相動静記事を見る限り、安倍と二階が2人だけで会ったことは一度もない。極めて異例の事態といっていい。