視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のシニア・エディターである浅羽登志也氏がベンチャー起業やその後の経営者としての経験などからレビューします。
根深い問題"ディープイシュー"を
解決するディープテック
最近は、ようやく朝夕の気温が下がり、すっかり秋らしくなってきた。私が毎年農作業を手伝っている田んぼでは、今年も無事に新米の収穫を終えることができた。
とれたてのお米は、やはりうまい。だが、それだけでは物足りない。おかずが欲しい。
ということで、数年前に、収穫後の稲わらを使い天然の納豆を作ってみた。
作り方は簡単。煮沸消毒をした稲わらを筒状に束ね、中に煮大豆を入れ、ふたをして温かいところに置くだけ。2、3日もすれば、稲わらに付いた納豆菌の働きで、白い菌糸で表面が覆われた、おいしい納豆ができあがる。
これを器に移してかき混ぜると、糸を引くネバネバが発生し、独特の強烈な匂いが鼻をつく。
味も濃厚だ。スーパーやコンビニで売っている納豆とは違う。確かに、小さい頃に食べていた納豆はこんな味だったか。納豆が嫌いな人や、この食べ物に初めて出合う外国人には、とても食べられたものではないだろう。
さて、この強烈な匂いや味を生み出す納豆のネバネバが、実は意外なところで役立っている。水質浄化だ。
ネバネバに含まれる成分には、水中の汚れや重金属類などの毒物を短時間で凝集し、沈殿させる性質がある。その作用を応用して、納豆から強力な水質浄化剤ができるというのだ。
実際に開発したのは、大阪にある日本ポリグルという中小企業だ。同社では出来上がった水質浄化剤を途上国に低価格で販売し、慢性的な水不足に苦しむ地域に、貴重な飲料水を提供している。