(2)退職者の投資、最大の目的は「購買力の維持」

 次に、退職者が株式投資をする上で大切なことは、その目的をはっきりさせることである。株式投資の目的と言えば、もうけることに決まっているだろう、と思うかもしれないが、投資に限らず、何らかのリターンを得ようと思えば、リスクをとることは避けられない。そして投資の目的によって、リスク許容度が異なってくる。

 わかりやすく言えば、株式投資で一攫千金を狙いたいのであれば、投資よりもむしろレバレッジをかけた投機の方がふさわしい。その代わり、大きなリスクを背負うことになる。

 定年退職者にとって、株式投資の目的とはいったい何だろう。その答えは「自分が持っているお金の購買力を維持する」ことにあると筆者は考えている。お金自体をたくさん持っていても、物価上昇によって購買力がなくなってしまえば、意味がなくなってしまうからだ。

 老後のフローの資金である年金は、賃金・物価とある程度連動する仕組みになっているので、それほどインフレを心配することはないが、ストックの資産である自分の保有資金は、何もせずに現金のままであれば、購買力を維持することはできない。

 したがって、自分が持っているお金の一定割合は預金以外にインフレに対してヘッジできるようなものにしておくべきだろう。これが若い投資家との最大の違いである。若い投資家であれば人的資本、すなわち働いて稼ぐ力を持っているので、仮に失敗しても働いて稼げばカバーできる分、リスク許容度は大きい。ところが高齢者になって大きな損をしてしまうと取り返すことは困難だ。したがって積極的にリスクを取ってもうけにいくというよりは、あくまでも「購買力の維持」というディフェンシブなスタンスで株式投資を考えるべきであろう。